・・・なんというかまあ、非常に抉られました。
恵まれた環境にいるお嬢様OL・栄利子とお気楽主婦生活をブログにつづっている翔子が出会い、仲良くなれるかと思っているうちにどんどん二人の関係が拗れ、取り返しのつかない所まで来るという、・・・・怖いよ!怖いったら!!
何が怖いって、なんか私自身に色々と心当たりがあるってことですよ!!
柚木麻子さんの描く『ナイルパーチの女子会』は、世の「女子会」に微妙な距離感を抱いている私を、大いに抉りまくってくれました・・・(^^;)。
だいぶランクダウンはするんですが、栄利子と翔子、両方にちょっと似てるんですよ、私。
栄利子に似てるところは、中学の途中からずっと東京の実家暮らしで大学生からOLになり、中学まで親の転勤であちこち転々してた上に元々の自分の性質的に〈友達〉を作るのがとても下手なところ。妙にバカ真面目で、空気が読めないところ。
翔子に似てるところは、子育てとダンナの転勤を理由に働きに出ることもせず、お気楽主婦(しかも家事は得意でない)でいたこと。
両方と似てるのは、自分を変えないで、周りが変わってくれないかな・・・と思ってるところ。人との距離の取り方が分からないところ。
・・・って書いてたら、すごく自分がイタイ人な気がしてきました・・・(-_-;)。
いや、女友達はいます。幸いにして、こんな私でも「友達」として認めて付き合ってくれる人たちが。たぶん、一般的な友達の数からはだいぶ少ないとは思いますが。少ないおかげで、私みたいな性質でもきちんと付き合えてると思います。・・・って、何言い訳してるんだろう、私(-_-;)。
まあ、作品の話に戻りましょう。
最初は栄利子に共感して、「真面目過ぎて女子の付き合い苦手なんだな~」ぐらいの気持ちでいたら、どんどん栄利子の行動がエスカレートしてきて、「いやいやソレはないよ!!」「自分を客観視してぇぇ!!」と、ドン引き。
でも、翔子の方も警戒しつつも〈自分にも女友達ができるのでは〉〈東京での疎外感が無くなるかも〉なんていう甘い期待で栄利子と付き合おうとするから、どんどん深みにはまり、気が付いた時には栄利子に脅迫されているという状況。
翔子を脅迫する栄利子も、会社の派遣OL・真織に脅迫されるという事態に。いやいやいや!そこでそれに従うってどうよ?!しかも従う理由が「彼女に従えば、翔子を取り戻すことが出来るのではないか」って!そんなわけないでしょう!!!
人との距離をどうとったらいいのか、私もよく迷うし、間違うし、後悔することも多い。さすがに栄利子や翔子ほどのとんでもない行動に出ることはないけど、でも二人の迷いや苦しさは理解できるし、何かがちょっとズレたら自分もこうなるかも?という危機感から、ずっとじくじくと胸が痛かったです。
だから、最後の方で翔子が色々と吹っ切って、父親との関係の持ち方を変えることにし、具体的な行動を考え出したことは、一筋の光が差してきたようで、心が軽くなりましたね。目を背けて逃げるばかりでは変わらない、少しずつ自分で行動するのだ・・・というのがよかったです。
栄利子の方も、長年の確執が拗れにこじれていた幼馴染・圭子と落ち着いて話をし、きちんと相手の言葉も受け入れ、自分の気持ちも伝え、そして自立を小さく決意する。圭子と和解したわけでも、翔子を取り戻せるわけでもなくても、前を向くことに気付いたこと。こちらも、ほっとしました。
作中でやたら「女同士は怖い」「女の関係性は必ずドロドロ」みたいなことを言ってくる男たちがいますが、短絡だなあと思います。女同士、じゃないです。人間関係って、少なからずそういうところは、あるものです。男女関係なく、マウンティングってどこにでもあるじゃないですか。
マウントしあわない関係も、もちろんあるけど。
出来たら、そういう関係で、ぬくぬくと過ごしていきたいです(笑)。
タイトルの〈ナイルパーチ〉が「白身魚」として流通してることは知ってましたが、凶暴な肉食魚だとは知りませんでしたねぇ。淡白な味わいの白身魚が、実は巨大で凶暴なお魚。そんなタイトルを持った女子会・・・って考えると、この作品、怖くて当たり前なのかもしれません。
怖かったけど、「世の中やっぱり甘ったるい関係なんてないんだぜ」ということを再確認できたという意味でも、読めてよかったです。最後に主人公2人が前向きに歩き始めそうなところも。
(2017.06.14 読了)
この記事へのコメント
すずな
彼女たちの行動に慄き、自分がこうなってもおかしくないという事実に驚き、と色んな怖さを感じたお話でした。
水無月・R
最初は単純に「栄利子さん、ストーカーだよそれは…」というビビりだったのが、「やっばい、この人たちと私と、たいして違わないよ…」という恐怖に(^^;)。
とんでもない作品でした。