小学生の時に腹心の友になった二人の女の子。
水商売の母親と二人暮らしで、「大穴(ダイアナ)」という名前にコンプレックスを持っていたダイアナ。
裕福で文化的な家庭で大事に育てられてきた、彩子。
2人は本の趣味も合い、お互いにない境遇に憧れ、お互いの真っ直ぐな強さをいつくしみ、とても大事に思っていたのに、些細なすれ違いが大きな溝になってしまい、絶交してしまう。
再会するまでの10年、2人は色々な出来事に出会い、成長する。その過程は苦みのあるもので、痛くて悲しくて、それでいてやっぱり清々しい。
柚木麻子さんが描く、リアルな世界に、ぐいぐいと引き込まれました。
『本屋さんのダイアナ』、本好きにはたまらない「本のエピソード」もたくさんです。
ダイアナと彩子の同級生、武田君のダイアナへの一途さに、心がほっとしましたわ~。いい子だ・・・。
ドキュンなヤンママと思われたダイアナの母・ティアラの、ところどころから仄見えてくる素性と芯に隠したまっすぐな強さがとてもカッコいいと思いました。
自分は真っ直ぐな母親でいられているかどうか、ちょっと反省…。
彩子の両親がダイアナを温かく迎えてくれたのには、多少事情を知っていたというのもあるのでしょうが、本当に人柄の良い「大人」だったからだと思いますね。
同様に、ティアラが彩子の今後の困難を思って口にする言葉にも、本当の優しい思いやりを感じました。
こういう偏見のない大人と付き合うことが出来た子供たち(ダイアナ・彩子・武田)は幸せですね。彼らの心真っ直ぐさ、強さは、こういった大人に育てられたんだなぁと思います。
彩子が簡単に堕ちてしまったのには、びっくり。リアルすぎる…。彩子の大学生時代はあまりに欺瞞に満ちてて、早く目覚めて!と思っていたのに、結局4年生になるまでそこから抜け出せなかったのは、とても胸が痛かったです。
でも、甘くて清々しいだけの現実なんてありえない、失敗して迷ってごまかして・・・リアルでした。自分で抜け出すことが出来たのは、本当によかったと思いました。
ダイアナが高卒後、本屋のバイトから契約社員になって、父親のことをティアラから聞いたときは、やっぱりそうだよなぁ…と思いました。その後色々な人から父親である作家「はっとりけいいち」のことを聞いて、どんな人かと思ったら・・・ちょっとがっかり。もちろん、ダイアナはもっとがっかりしたでしょうけど…(^^;)。でも、そういうところも「物語的ではなくリアル」という意味で、なんだかしっくりきました。
彼の登場で、更にティアラの株が上がっちゃいましたねぇ・・・。
ところで。
ダイアナのバイト先の朝礼で、東十条宗典の名前が出てきた時には、吹き出してしまいましたよ!
『私にふさわしいホテル』で、主人公・樹里に襲撃された大文豪・・・(笑)。
柚木作品世界、つながってますなぁ♪こういう小技、大好きです。
(2017.08.08 読了)
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