6つのグリム童話を、大人のためにさらに暗黒方向に翻案させたアンソロジー。
6人の著者も6人の挿絵画家も、とても豪華でした。
『暗黒グリム童話集』というストレートなタイトル、真っ黒な表紙の地に描かれる各ストーリーのモチーフ、ちょっと大きめの版型、本の装丁そのものもなかなか魅力的でした。
「手なし娘協会」村田喜代子・文×酒井駒子・絵
世界各地の継娘いじめ譚「手なし娘」の主人公である女たちが集まる会合。
「あめふらし」長野まゆみ・文×田中健太郎・絵
町を震撼させた魔物は、神の不注意の産物で。
「BB/PP」松浦寿輝・文×及川賢治・絵
最新AIを搭載したアンドロイドの持ち主の最期は。
「ヘンゼルとグレーテル」多和田葉子・文×牧野千穂・絵
あの物語の魔女の真実。だとしたら、悪いのは誰?
「ラプンツェル」千早茜・文×宇野亞喜良・絵
音楽家が見出した幼女は、長じて音楽家のためだけの歌姫となるが。
「赤ずきん」穂村弘・文×ささめやゆき・絵
どこからどこまでが赤ずきんの本当の物語?
どれもなかなかに、えげつなかったですねぇ(笑)。
「BB/PP」、他者の介入なしで自己成長のみでこのラストを迎えるというのは、なんともAIというものの恐ろしさというか、シンギュラリティ怖い・・・ですな。こうなる展開は読めてましたが、BBは最期の瞬間、幸せだったんじゃないかという気がしますよ。本望というか。
逆にかわいそうだったと思うのは、「ヘンゼルとグレーテル」のカタリーナ。ヘンゼルとグレーテルの物語とカタリーナの物語がどこで交錯するのか予測がつかなくて、カタリーナの境遇に同情してたのになぁ。確かに、カタリーナがしてしまったことは悪いことだけど。因果応報と言えば、因果応報だけど。彼女が救われるラストでないということが「暗黒童話」だなぁと、切なかったです。
ヘンゼルとグレーテルを棄てたのが、継母ではなく実の母で、再婚した夫の愛を狂執的に試すが故、っていうのもあり得るダークさで悲しかったですし。
因果応報…なのかな、子供たちが戻ってきた時には両親ともに・・・っていうのも。
「赤ずきん」は、最後の最後で「あれ?赤ずきんの赤ずきんたる物語はどこまでだったの?」と気付いて、ぞっとしました。意地悪だなぁ、この構成は(^^;)。
それぞれの物語と挿絵の組み合わせがよかったですね。
千早さんの「ラプンツェル」が目当てだったのですが、他の作品もとても良かったです。えげつない残酷童話は、結構好きです(笑)。
途中でページに急に色ページになり活字もそれに合わせた色が使われてたのが、ぜいたくだなぁと思いました。
自然に読んでいて、雰囲気がおどろおどろしくなったり、爽やかになったり。
そして、物語の残酷性が際立ったような気がしましたね。
しかし酒井駒子さん、抜き取られた美しい腕を無邪気に抱えて歩く幼児たちの絵は、なかなかにシュールですよ・・・。酒井さんの描く幼児の頬のふっくらした感じと妙に大人びた表情と相まって、、一番衝撃的な絵面でした。
(2018.01.17 読了)
この記事へのコメント
苗坊
なかなかにダークな作品でしたね^^;
「手なし娘協会」は語りが穏やかな分怖さも増していた気がします。挿絵が更に怖かったです…。
「BB/PP」も凄かったですね。ホラーですよ、スプラッタですよ^^;
短編集ですが作家さんが皆さん好きな方ばかりだったので楽しめました。
また、こういう作品も読んでみたいです。
水無月・R
そうですね、あちこちで血がドバっと出てましたね(^^;)。スプラッタでした。
好きな作家さんの描く「ダークな童話」って、妙に背徳的な感じがするような気がします。