『お引っ越し』/真梨幸子 〇

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真梨幸子さんらしいよなぁ(笑)。『お引っ越し』に関する、厭ぁ~な短編がいくつか並び、ちょっと登場人物や場所がリンクしてるなって気づいた辺りから、「あ・・・これはアカンやつ・・・」ってなり、帯通りの〈サイコミステリ〉がグイグイと迫ってくるわけですよ。はい。
イヤミスの女王って称号、私の中でどの作家さんにするか微妙なところではあるんですけど、本作はイヤミスでありつつ〈サイコミステリ〉という分類の方に、重きを置いた感じがしますね。

私、子供の頃は父親の転勤、自分の就職が地元以外だった、オフィス移転も経験あり(派遣であちこちの会社に行ったこともある)、結婚した夫も転勤族という境遇のため、たぶん一般的な皆さんと比べると、引っ越し回数は結構多い方です。幸いにして本作のような〈ヤバいお引っ越し〉の経験はないのですが、〈荷造りが進まない地獄〉とか〈オフィス引っ越しで自分の荷物が行方不明〉とか〈職場の机に前任者の私物〉というのは経験アリ。
(うっわ~、私の引っ越しの時は、こんな事態にならなくてよかった~)と思った次第であります。

内見の時に「前住人」がどんなだったかを気にするOL、実家から持ち出した「墓場まで持って行く秘密」の箱を整理しきれず大汗をかく女性、引っ越し業者でパートする女性が見つけた前任者?の手紙、職場の引っ越しで嫌がらせをされるOL、隣の家でのDV騒音に悩む会社員、怖い話好きのOLが陥った悪夢の無限ループ。

それぞれの話は単体でも、後味が悪くて「あ~たぶん、これ背後に〈ヤバい犯罪&事件〉があるわ~」という匂いプンプン(物語中でがっつり犯罪が起こるものもある)のですが、それぞれに役割が違うにもかかわらず「アオシマ」という名前の男が、共通して登場するのですよ。いい人そうに見えて、大変アヤシイ感じの。
しかも、全ての物語が終わり、解説が始まると、その解説者は「これらの物語に心当たりがある」「この物語の舞台を知っている」とか書く。そして、最後の署名が「アオシマサブロウ」。
・・・へぇ~。
いや、逆にね、怖くなかったです(笑)。そりゃ「アオシマ」氏なら全部心当たりがあるよね~。しかも自分で「死神」とか書いちゃってるんだ?ははは~(ちょっと中二病っぽいよ)。その部分はちょっと余計だった気がしますな。

まあ、言えることは引っ越しの内見や引っ越してから気づいた隠し扉的なものを開けるときは、元に戻れるように扉の開放は確保しておきましょうということですね(笑)。
あと、異臭がした時は、出来るだけ早く一人ではなく、頼れる専門家と対処することですね~。
でも、私ケチなんで、ついつい「自分で対処できれば安上がり」と思いそうなので、〈何かを発見してしまった〉場合は、速やかに精神のシャッターを下ろして専門家を呼ぶことにします・・・。

夏向きのサイコミステリ、楽しめました!
あ、ちなみにね、たぶんなんですけど、舞台となるマンションのある「オシャレな街」に、心当たりあります(笑)。
案外ね、あの街、ウラ在りそうなんですよ(笑)。ふふふ。

(2018.08.04 読了)

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角川文庫 真梨 幸子 KADOKAWAオヒッコシ マリ ユキコ 発行年月:2017年11月25日 予


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