連続婚活殺人の容疑者として獄中にある梶井真奈子を取材するため、あの手この手で面会を取り付けようとしている、主人公・町田里佳。
「料理」という切り口を親友・伶子から勧められ実行したところ、梶井は「事件のことは話さないが、料理の話はする」と面会の場に現れる。
梶井との面会を繰り返すうちに、里佳とその関係者たちは、変容していく・・・・。
柚木麻子さん…、こういう話も書くんですねぇ。
『BUTTER』というタイトルからもう、どろりと溶ける世界が見えてきて、なんとも・・・。
料理の描写も「こってり」でした…。
バター、好きですよ。好きですけど、カロリーとお値段を考えると、マーガリンになっちゃいますよねぇ(笑)。
梶井に軽蔑されるタイプなわけですよ、私。
料理はしますが、そんなに好きじゃないし。女性は男性に尽くしてこそ、なんて意見は絶対にノー。
それでも、梶井の語る信念からあふれる、どろどろとしたものに囚われて、思わず梶井に傾倒してしまいそうな里佳が理解できてしまって、読んでて動揺しました。
週刊誌の記者である里佳は、梶井の件を取材し記事にするために、梶井の料理を再現し梶井が親しんでいた外食をとり、彼女に近づけば近づくほど、自らの暗部を覗き込まされ、孤独を思い知らされ、醜い自尊心を意識させられる。
梶井の吸引力は、梶井の孤独にあったのだろうな、と思います。孤独を意識しないために、他人に悟られないために、梶井が自らを装い、そして居丈高に他者を決めつけ、支配したことで、犯罪は起こった・・・・。梶井が直接殺したのか、単に梶井の言動が被害者たちの死につながっただけなのか、結局物語中では、何もはっきりしていません。どっちだったのか、全然わかりません。
途中から、梶井が「友達」をちらつかせ、里佳にすがるようになって、里佳がようやく梶井の記事を紙面に載せるようになったころ、どうにも違和感がありました。あれだけの支配欲と自己顕示欲と虚飾を抱えた梶井が、そんなに里佳に自己を委ねるようになるものか?という。
案の定、梶井の裏切りがあり、里佳は記者としてどん底に叩き落されることになってしまいました。
そこから、自ら背水の陣を用意し、周りの人々からも助けられ、そして里佳自身も彼らの助けになり、自分の未来を切り開こうとする強さが、眩しかったです。
周りから助けられたのは、里佳の人徳だなぁと思いました。
前半は、梶井の語る「バター醤油ご飯」をはじめとするレシピや梶井の好きな外食を読んで、お腹が空いた~、私も食べた~い!ってなってたんですが、ちょっと後半は(食べてもいないのに)胃もたれ気味でしたね。いやぁ、この年になるとバターどっしりのフランス料理って、辛いんですよねぇ。ビンボーなんでロクにそういうもの、食べつけてませんので、ちょっとならまだしも(笑)。
梶井の影響力を理解できるような気がしつつも、あんまり流されなかったのは、そのせいかもしれません(笑)。
流されはしなかったけど、疲れましたねぇ。
全編を通して、一番食べてみたいものは里佳が丁寧に焼いた七面鳥かな、やっぱり。あの描写は、たまらんですよ。適当な七面鳥丸焼きではなく、里佳が焼いたのを、食べたい。フィクションの壁を乗り越えられない以上、叶いませんなぁ。
私でも確実に出来るであろう「バター醤油ご飯」も、美味しそうではある。けど、これをやったら、色々悔やむことになりそうで、怖いですね(笑)。
(2018.02.24 読了)
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この記事へのコメント
苗坊
読んでいくうちに段々消化不良になっていくお話でしたね^^;
私も里佳と同様に梶井に引き込まれそうになりました。危なかったです。
それでも里佳への裏切りからやっぱりこういう生き方しかできない女なんだと少し同情すらしてしまいました。
でも、1度ものすごく高いバターをご飯にのっけて食べてみたいと思いました^m^
水無月・R
バター醤油ご飯、実は一番心惹かれてます(笑)。でも、カロリーとかカロリーとか…(^^;)
梶井の裏切りは、なんとなく予想できましたね。
とにかく、虚栄心というかプライドが高く、悪い方向へねじ曲がってしまってる・・・。そうやって生きてきたことから、逃れられないという意味で、同情しました。私も。