スイートなものからダークなものまで、様々な掌編が詰まった一冊。
本作『抱卵』でデビューの堀真潮さんは、表題作「抱卵」で第一回「ショートショート大賞」を受賞。
24作品、それぞれに違った味わいがあり、楽しめました!
まず、一番最初の作品「井戸の住人」で、ぐっと掴まれました。井戸に引きこもってる(笑)幽霊とその家の夫婦と霊媒師のやり取りが、可笑しすぎ。でもきちんとほっこりする終わり方で、面白かったです。
「チョキ1グランプリ」が一番好きですなぁ。少年少女の初々しさが素敵。チョキ(ピース)の美しさを競うコンテスト、という設定が面白いし、代表の少女を温かく応援する地域の人たちも優しくて。
好きな人のチョキが、一番素敵に見えるものなんですよね~♪
「本の一生」も、本好きにはたまらない展開ながら、最後のひねりにはニヤリとしてしまいましたね~。まさかの〈繁殖〉とは(笑)。
中盤で「本」がでろでろになった時は、ビクビクしましたけど。
表題作「抱卵」も切なく、幻想的で美しかったです。戦場で死んだ恋人の胸にあった4つの卵。その卵の味と、恋人の思いと、4つ目の卵を抱いて生き続ける女性。そして、彼女に差し伸べられた手と4つ目の卵の結末。スッと胸が晴れるような気持ちになりました。
「瓶の博物館」も面白かったです。私もこういう博物館に、行ってみたいですねぇ。
それぞれの瓶に見合った音が聞こえるなんて、素敵ですもの。とっておきのワインの瓶が、高音のアリアで・・・そして、茫然とワイン臭くなって立ち尽くす、というラストも、私的には美しくていいなぁと思いました。
他の作品も、それぞれに短い物語の中でコンパクトに、色々なストーリーが描かれていて、読み応えがありました。
割とゾワゾワするような話が多かったですが、それぞれ捻りある展開で、飽きずに読めましたね~。
この後、どうなっちゃうの・・・という終わり方も多く、妄想の余地があるのが良かったです!
ショートショートって、サクサク読めるので、読者としては嬉しいのですが、作者さんは大変なんだろうなと思います。
堀真潮さんの才能を生かして、この先も発表していって欲しいですね。
(2019.02.16 読了)
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