『火の中の竜 ~ネットコンサルト「さらまんどら」の炎上事件簿~』/汀こもるの 〇

車椅子の美青年所長・オメガ率いる、ネットよろず相談所「さらまんどら」。
彼らの得意な分野は「炎上案件」。
店のサイトが炎上してしまったパソコン教室の生徒を連れて行った「先生」こと「ぼく」も、その仲間に加わることになり、事件にかかわっていくことに・・・。
汀こもるのさん、初読み作家さんです。勢いのある展開で、大変読みやすかったです。
『火の中の竜 ~ネットコンサルト「さらまんどら」の炎上事件簿~』、今時感満載でした。ネットってなんとなく使ってるけど、便利な分落とし穴もあるんだなぁと、今更ながら感じました。

メディアワークス文庫ですから、まあがっつりラノベ調。イケメン二人の表紙も「不敵な笑みを浮かべるインテリヤクザ風」と「真面目そうな優男」という、まあグイグイ引っ張りますね(笑)。
このインテリヤクザ風が所長のオメガ。筋力がだんだん落ちて最終的には心臓などの不随意筋も動かなくなるという難病に侵されている、薄倖の美青年・・・と言いたいところだけど、まあ口を開けば「炎上メシウマ」「私は失うもののない年金生活者だから」とネットトラブルに突入していく、口数多く車椅子で外出もこなすキャラ立ち。
そのオメガと同居する小学生男子・リセと女子高生・サクラ(二人とも事情持ちで引きこもり)、本作ではあまり活躍のなかったコミュ障の校閲(成人女性)、マリー(ガタイの良い成人男性なんだけど…)も「さらまんどら」のメンバー。それぞれ、かなりの個性がある人々ですな。
そして本作で新規加入?した先生だけど、最初の方でサラッととんでもないヒントを提示しており、実はあまり「普通」じゃない。

こんなメンバーで「ネット炎上」や「サイトパクリ」など、様々な事件に関わるもんだから、とにかくなんというか、勢いが凄い。ネットスラングやイマドキ用語やカルチャー系のネタが飛び交うので、この作品の賞味期限がちょっと心配になります(笑)。面白いし、ネットに関する心得とかモンペ力(もんぺりょく)とか、多くの人に読んでもらいたいんで、ぜひ続編も出してほしいものです。

オメガの前身・・というかその顛末が結構シリアスだし、リセの生い立ちもかなり…(とはいえあのハードボイルド口調はどうにかならないものか(笑))、先生も普通じゃないし、「あとがき」によればサクラもかなり訳ありの模様。気になりますわ~、ホント。

ずっと先生の視点で語られるエピソードの中で、最後の章「ドラゴン・スレイヤー」の一部で、車いすごと崖ビューの窓から転落させられたオメガと探索しに単身降りて行った先生のやりとりだけが、オメガの視点で語られます。
奇を衒ったハイテンション口調でないオメガの語りが、なんとも切ないというか・・。ここでの先生の口調がぞんざいなのが、結構いいと思ってます。オメガが「先生、マジで私に甘えてきますね」って言うちょっと前から、先生とオメガの距離が凄く縮まった感じがします。まだ、先生の地獄はオメガには語られてないけど、それを知ってもきっとオメガは引いたりしない。逆に仲間としての関係性が強くなりそうです。そういう関係って、いいなと思います。

(2019.05.17 読了)

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