『RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴』荻原規子 ◎

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荻原規子さんの〈RDG レッドデータガール〉シリーズの最終巻を読んだのがもう、6年も前ですかぁ・・・。
本作『RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴』は、深行視点の短編3つと真響視点の中編1つからなる、スピンオフ作品です。
本編はほぼ泉水子目線でストーリーが展開していたので、別の人の視点で本編の間の出来事やその後のことを知れたのは、新鮮で良かったです。

「影絵芝居 相楽深行・中三の初夏」
一緒に暮らすようになっても、頑なに人見知りを続ける泉水子がやっと深行に近づいてきた話。
「九月の転校生 相楽深行・中三の秋」
泉水子に先行し、鳳城学園に転校した深行と真響の出会い。
「相楽くんは忙しい 相楽深行・高一の秋」
文化祭準備で忙しい深行、なんとなく報われてない(笑)。
「氷の靴 ガラスの靴  宗田真響・高一の冬」
本編その後。スケート教室の裏で、〈世界遺産・チーム姫神〉の視察が行われる。
宗田本家の意向が見え隠れするその行事の中で、宗田3姉弟の事情と「チーム姫神」内の立場が交錯する。

深行視点の3篇は、本編ではだいたいシラーっとしていた深行が実は、あたふたしたりヤキモキしたり自嘲したりしてたことが分かって、面白いです。姫神になってしまうかもしれない泉水子を支えていこうという決意をするまでの、モヤモヤ→覚悟の外側をのぞき見したような気になりました。・・・まあ、何というか、深行ガンバレ(笑)。

そして、基本〈完璧美少女〉である真響の葛藤が描かれたスケート教室での出来事は、神霊を三つ子の弟に持ち、戸隠の忍者一族の惣領娘であるという彼女の一族内の事情に翻弄される様子が、真響の立場ってホントに大変だなぁ・・・と改めて気付かされました。
それでも「深行と泉水の関係が進展したはずなのになんだか落ち着いちゃってておかしい」とかにヤキモキする姿は、友達の恋バナに揺れる女子高生っぽいところもあり、しっかりしててもお年頃なんだよねぇ・・・と、彼女にも年相応の楽しさやささやかな幸せがあって欲しいものだと思いました。

スケートリンクで、悪霊に憑かれていた真響たちの従兄・克巳を封じ込めるために、深行と泉水子が結界を作り、神霊・真澄を呼び出した宗田3姉弟が克巳と対峙し、ちゃっかりその場に入り込み先制攻撃だけしてあとは自分の身を守っていた高柳・・・という見事なチームプレイが、素晴らしかったですね。

ていうか、高柳ですよ(笑)。『RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日』〈喋る白い犬(笑)〉に変身させられて以来、私の中では高柳はオチ要員なんですが、この人ホントに面白いですよねぇ。いつも自信満々な陰陽師少年。あれだけコテンパンにやられても「チーム姫神の表の顔は自分」とか、真響の偽装恋人役に立候補(嫌がられてるのに気づいてないのか?)とか、もうホントここまで来るといい意味で「おバカさん」なんじゃないかと、オバチャン嬉しくなっちゃうですよ(笑)。
チーム姫神には今後も色々な艱難辛苦が訪れると思いますが、高柳には変わらず〈オチ要員〉でいて欲しいです。ある意味癒しの存在(笑)。

神霊である真澄が、自分の背後にいる神霊本体の九頭竜を起こそうとしたのを食い止めたのは、泉水子。
戸隠の一族の思惑と世界遺産視察の思惑をうまく切り抜けられたのは、チーム力の賜物。チームのみんなが成長してるのが感じ取れて、嬉しかったですねぇ。

最後に、真夏が祖父に仕掛けた「真澄を見えるようにする」状態、少しは戸隠(および一族の長である祖父)の態度も変わるのでしょうか。真澄の存在を認め、三つ子の力とそれを活かしてチームを作っていくこと、彼らにも自由意思による行動を認めること・・・。宗田3姉弟みんなが、幸せになって欲しい・・・と願ってやみませんね。

スピンオフがこの後続くのか、泉水子と姫神の物語は描かれるのか、期待したいところではあるのですが、物語そのものが壮大になりすぎて難しいかもしれませんね。
ちょっとしたスピンオフぐらいはあったら嬉しいなぁ・・・ぐらいの気持ちでいることにします。

(2019.09.25 読了)

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