『異人館画廊 ~透明な絵と堕天使の誘惑~ 』/谷瑞恵 〇

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ついに、谷瑞恵さんの〈異人館画廊〉シリーズ、ターニングポイント。
『異人館画廊 ~透明な絵と堕天使の誘惑~ 』は、とうとう主人公・千景の幼少時の「誘拐事件」の真相が判明します。
本作のレビューは、私にはネタバレせずに書くことが出来ないので、申し訳ありませんがその旨ご了承くださいませ。

千景のもとに、図像術をほのめかすような脅迫じみた手紙が紛れ込み、千景は祖母の営む異人館画廊に集う、稀覯絵画愛好グループ・キューブのメンバーとともに、調査に乗り出す。
心霊スポットにある絵が「人を不幸にする」と噂になり、訪れる人間が増えているという。
調査を進めるうちに、「図像術を使った絵をボストンから持ち出した男・小原」「小原にマネージメントされているアーティスト・真柴」「彼ら二人に関与する、千景の父・此花伸郎」の存在が浮かび上がる。
かつて、父の友人・犬飼に誘拐された千景は、犬飼に強要され図像術の絵を模写し、それを見てしまったと思われる犬飼は焼身自殺したことを思い出す。千景を救出しに来た透磨もその絵を見てしまったが、千景が自分のブレスレットについていたチャームととあるしぐさでその図像の印象を上書きし、透磨は悪意ある図像の影響を受けずに済んだ。
その誘拐時、彼女の絵の断片を見、それを完全に再現できた隣家の少年が真柴であり、彼は成長し小原の助言を受けて「図像術の絵」を完成させ、公開しようとしていた・・・。

千景は「自分が悪意ある図像術の絵を模写し、それを見た人が自殺をした」という記憶に耐えられず、ずっとその記憶を封印してきた。
しかし、彼女が描いたのは、反対の影響を与えるものであったということ、それも思い出した。
表向きは、結局思い出せなかった・・・ということにして。

表紙の千景と透磨が、6冊目にして初めて手を繋いで立っています。今まで、隣り合いながらも微妙な距離で立っていたのが、ちょっと困ったような顔で、手を繋いでいる。・・・おばちゃん、感激ですわ~。ずっと二人の関係にヤキモキしすぎて、疲れちゃってたので(笑)。

レビューの冒頭で描いたように、本作はターニングポイント。
18歳にしてイギリスの大学をスキップで卒業して、図像術の研究者として認められつつも、「何を描いたのか(透磨以外は)誰も理解できないレベルの画力」であった千景が、「自分は図像術の絵が描ける」ということを思い出しました。
今後、図像術にまつわる事件にまた出会うことが物語になるのか、透磨との関係はどうなるのか、未だ対立する父をどう乗り越えるか・・・など、展開の予測がなかなか難しいのですが、出来れば続いてほしいですね。
千景は図像術を悪用しようとはしないだろうし、透磨や祖母をはじめとするキューブのメンバーも彼女を支えていくでしょうし。
続巻を、期待したいです。

しかし、やっぱり「図像術」に関しては、疑問に感じてしまいますね。
今作でも神話やキリスト教などが象徴として描かれていたわけですが、これはその素養の無い私みたいな純日本人にも、効果があるのかしら。・・・疑問だわぁ。私、信仰心がない人なので・・・。

(2020.01.05 読了)

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