読了した翌朝から、妙に涼しい風が吹いてきて、まるで私がこのホラーを読み終えたことで、〈真夏〉が終わったかのような・・・。
いやいや違うし!そんなんじゃないし!!
なんか自意識過剰過ぎるでしょ、私!!
澤村伊智さんが放つ〈比嘉姉妹〉シリーズの短編集、『などらきの首』。
短編集だから、サクサク読めました。サクサク読めたって、怖いものは怖いんですけどねぇ。
『ぼぎわんが、来る』で恐怖のどん底にたたき落され、『ずうのめ人形』で背筋が凍り、澤村作品は夏に読むべしと勝手に決めつけた私の手元にやっと図書館の予約順が回って来た本作。
いやぁ・・・、やっぱりあれよ、怖いね(笑)。人間は怖いし、怪異も怖いし、鈍感な私が気付かないだけで、怖いものなんてあちこちに転がってるのかも・・・なんて思っちゃいましたよ。澤村さんの文章の迫力ですかねぇ。
「ゴカイノカイ」
まさかの、「おまじないが本当になってしまう」話。
「学校は死の匂い」
比嘉姉妹の次女・美晴が、小学生の時に解き明かした怪異。
「居酒屋脳髄談義」
比嘉姉妹長女・琴子が、とある居酒屋で祓った者たちとは。
「悲鳴」
大学のホラー映画サークルで起きた事件の顛末。
「ファインダーの向こうに」
撮影スタジオの怪異現象を追う、野崎。
「などらきの首」
友人の子供の頃の恐怖体験を、理路整然と解いたはずが・・・。
〈人間がいちばん怖い〉なんていう、陳腐なセリフをついつい吐いてしまいそうになる展開でありつつ、最後の最後に「・・・え?今のって・・・?」と呟いてしまった「学校は死の匂い」。
これはアレですわ、全員に復讐するまで続くんじゃないかしら、〈白い少女の落下〉は・・・。
「ゴカイノカイ」の「痛いの痛いの飛んでいけ~」がまさか本当に飛んで行ってしまうとは・・・思ってもみなかった!!私、子供が小さい時によくやってましたが、まさかあれ、どこかに飛んで行ったんじゃないでしょうね・・・。いやまあ、私にそういう能力はないと思いますが。この物語で、真琴と野崎が知り合ったんですね。
しかし、最初に出てきた「潰し屋」・・・。こういう鎮め方も、アリなのか・・・あの業界は。怪異以外の方向性で、怖いな。
「悲鳴」は、読んでて怖いなとは思ったけど、それほど刺さらなかったんですよね。「まあ、言霊ってあるよねぇ、それが凄く効くタイプっているんだなぁ」な~んて、軽~く考えてました。ふと自分の『ずうのめ人形』のレビュー読み直すまでは。
あ・・・、あれ?「ずうのめ人形の思い出」を書いた(つまりは怪異の元凶)〈理穂〉って。りーたん、リホって呼ばれてたよ?うっわ~、無意識なのか意識的なのかわからないけど、あのデカい怪異以外も、チョコチョコこういうことをやらかしてたの?
とんでもない奴だわ・・・、と後から怖くなりました。
表題「などらきの首」。
友人が子供の頃に出会った恐怖体験を聞き、友人と現地に戻り理路整然とその恐怖を解き明かした、高校生の野崎。
だが、解き明かし「首」の在り処まで語った瞬間、足元に転がった「潰れた西瓜提灯」と、消えた友人の祖母。
突然すり替わった〈現実〉と〈怪異〉に、ゾッとしました。言い伝えは本当だったということももちろんだけど、首を取り返した「などらき」は?という恐怖が残ったのですよ。物語には関係ない、ことではありますが。
やっぱり、「言い伝え」を破ると、とんでもないことが起こっちゃうわけで、言い伝えなんてただの妄言で現代にそんなの持ち込むなんてナンセンス、などと言ってたらしっぺ返しを食らうということですなぁ・・・なんて思ったりもしました。
〈比嘉姉妹〉シリーズと書きはしましたが、3姉妹メインの登場はそれぞれ1編ずつで、野崎が出てくるのが3編でした。
しかし・・・、高校生の頃から、しれ~っと怪異現象に関わってたんですねぇ、野崎。比嘉姉妹みたいに、見えたり鎮めたり出来るわけじゃないのに。彼が怪異現象に興味を持つように(かかわるように)なったきっかけの物語とかも、読んでみたいですね。
なんとなく、もしかしたら・・・と思うんですが・・・。
〈ぼぎわん〉から始まって、〈ずうのめ〉、〈などらき〉、〈ししりば〉(←比嘉姉妹シリーズの次の作品タイトルの一部)と、ずっと題名に濁点が入ってるんですよね。ひらがなで。
なんかねぇ、これが怖い。根拠はないのに、妙に不穏さが漂う。
でも、読んじゃいますね、絶対。でも『ししりば~』は、来年の夏かな(笑)。
(2020.09.05 読了)
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