例によって、例の如く、凶器レベルに分厚い(笑)。
テーブルなどに置かず、手で持ってるだけの状態で通しで読んだら、腱鞘炎になっちゃうんじゃないだろうか。
タイトルが『魍魎の匣』なんですが、まさに箱ですよ、この本の形状(笑)。
憑き物落としの〈百鬼夜行シリーズ〉2作目です。
前作『姑獲鳥の夏』の時と同様、凡人でしかない私は息も絶え絶えになりながら読ませていただきましたよ、京極夏彦さん!!
ステイホーム期間に入手したこの作品に、やっとたどり着けた今月。
厚みにちょっとビビりつつ読み始め、いろんな事件や事態が次々に展開し、シリーズ主要人物たちそれぞれが別々の事件に関わった末に、京極堂の元に集結するまでは、「なんて猟奇な事件なんだ!」「何故こんなことが起きるのか?」「犯人の目的は?」などがグルグル回りながら情報量の多さ(でも全然事件の全容は見えてこない)に溺れてました。
ところが、京極堂は「それらは全然別の事件なのだ」というのである。京極は、関口・榎木津・新キャラの鳥口(カストリ雑誌の編集者)などに追加調査を課して追い返し、木津の話を聞き、聞きたいなら後日自分の解釈を聞きに来いという。
うわぁ・・・。あの時点での錯綜した情報だけで、事件の概要がつかめてるのか、京極堂。怖ろしい・・・。
京極が5つの事件だと解いてる全部を解説したり、それについての私の意見をどうこう言っても、ろくな文章にならないのでやめておきます。
もうね、ワタクシは凡人でございますから。頭脳も異能も持ち合わせておりませぬゆえ。
折々に挟まれる久保竣公の幻想小説が、現実の事件からの着想を得たもののようでありながら、実際は事件を先行していること、その内容のおぞましさ忌まわしさ、語り手の男の切望と焦燥がじわじわとこちらを侵食して来そうな、微妙に上手さを外している文章の吸引力。
不安感を煽られましたわ~。
美馬坂博士の研究、怖ろしいな。終戦直後…ではないにしてもまだまだ昭和前半に、こんな技術があったとしたら、ほぼ悪魔の所業ですよ。現代医学でも、無理なんじゃないだろうか・・・。いや、技術的にはアリとしても、人道的にアウトだと思うんですよねぇ。ああ、怖ろしい。
まあ、最後の最後にとあるモノに咬み殺されてしまったんですけどね、美馬坂。自業自得とはいえ、あの死に方はなかなか業が深い・・・。
色々な巡り合わせがあって、加奈子の列車飛び込み事件、美馬坂博士の研究所での誘拐事件、加奈子出生の秘密、新興宗教・お筥様の実情、あちこちで上がるバラバラ死体、久保の暗躍、すべてが一つの事件のように思えるのに、実は違うという京極堂の解き明かしの鮮やかさ。
相変わらず関口は榎木津たちにうまいことあしらわれて、オロオロしながら真相に至る情報を得てるのに全然理解できてない所が、なんとも親近感を感じますね。
〈怪異なんてものは、ない〉のである。何かのせいにしたい〈ひと〉がこじつけたり頼ったりしているだけ。
そして事件が起こるのも、理路整然とした理由があるのではなく、ただただその状況があり、ふとしたはずみでそうなってしまっただけなのだと京極堂はいう。
つい〈事件という穢れ〉を現実から落とそうとしてしまうけど、誰にでもふとその瞬間は訪れるかもしれない。
その危うい境界に一番近いのは、関口なんだろうなぁ。危うく〈久保の匣〉を開けそうになってたし・・・。
全然内容に触れてないし、作品の魅力をちょっとでもかけたかというと、全然至れていないのですが、収拾が全くつかないのでやめておきます。
ただ・・・。ラストの「匣を連れて歩く雨宮」には、ゾッとしましたねぇ。雨宮は、幸せなんでしょうね・・・。怖・・・。
(2020.10.09 読了)
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