図書館でこの『Another 2001』 を受け取った時、正直「ヤバい・・・」と思いました。
まず、京極作品張りに分厚くて重い(笑)。
そして、前作『Another』及び『Another エピソードS』で語られた、繰り返す理不尽な〈災厄〉や〈死者〉の存在の不気味さを思い出して。
これは、心してかからないと、とんでもなく難航する恐れがあるわ・・・、と。
実際、10日以上かかってしまいました。
そして・・・なんていうかもうホント、怖いとかそういうレベルじゃなくて、震撼させられました。
綾辻行人さん、どれだけ畳み掛けてくるのよ・・・。
正直、実際には起こるはずもない〈現象〉なわけですよ、〈夜見北中学3年3組の災厄〉って。
だから、自分に降りかかることへの現実的な怖さは一切なかったんですけどね。
とにかく、次から次へと、3年3組のクラス構成員及びその2親等までの関係者に「死」が訪れる。
事故死、病死、自死、他殺・・・、発生は多様と言えども、不自然なほどに数多くの死が彼らの周辺で発生し、彼らを怯えさせる。
「対策」はちゃんとしたはずなのに・・・と。
前作『Another エピソードS』の登場人物、比良塚想が主人公。3年ののち、彼は夜見北中学の3年3組構成員となり、3月の「対策会議」で〈いないもの〉の役割を自ら買って出たことから、物語は始まる。
実は、物語が始まってすぐに「1998年度の〈災厄〉による(と思われる)死亡者一覧」があり、その中に今年度の3年3組の構成員がいることが既に分かってしまいます。つまり、死者が誰かということを、作者・綾辻さんは読者には明かしているわけです。
主人公・想とその死者の関係を思うと、読み始めからかなり、切なかったですね。
4月始業式。3年3組の机は一つ足らず、今年が〈ある年〉だということが判明。
〈災厄〉の対策としての〈いないもの〉を発動させることになる。この年は、もう一人の〈いないもの〉を立てることで、より対策を強化しようということになって、葉住という女子がその役を引き受けることになったのだが・・・。
葉住は途中で〈いないもの〉を放棄し、その瞬間から暴風雨・教室への烏の飛び込みなどの混乱が起き、担任の兄の死、クラスメートの死・・・と、累々と死が折り重なって行く。
『Another』で、発生してしまった〈災厄〉への対抗手段として、〈死者〉を〈死にかえす〉ということがわかったのだが、まず誰が死者なのかを判別することが出来るのは、『Another』の見崎鳴だけ。
鳴は、想と3年前からずっと繋がりがあり続けたので、本作でもためらいがありながらも死者を見分け、そして想がその〈死者〉の〈死〉を確認したのだが・・・。
1カ月の間〈災厄〉は発生せず、彼らは平和な夏休みを過ごす。
ここまで読んで、「いやいやいや、残りページ的にまだ一波乱あるよね?ん・・・あれ?ちょっと待って?始業式の日に足りなかった机は1つだけだった。ってことは、・・ヤバいよ、対策が逆に間違った事態を呼んでしまったんじゃない?」と気付いてしまったんですよ。
私は読者で、登場人物たちのように記憶や記録を改変されたりしてないので。
そして、気付いた私をあざ笑うかのように、次々と3年3組に〈災厄〉が降り注ぐ展開に。
学校での集団ヒステリーからの異臭騒ぎ、気分が悪くなったり怪我したりした生徒たちが搬送された病院へ突っ込むヘリによる病院の一部崩壊と火事、想も鳴も、そして夜見山市を離れて生活している榊原恒一をも巻き込んで、〈もう一人の死者〉が判明する。
その死者は、三年前の鳴たちの代で最初に〈災厄〉によって亡くなった鳴の双子の妹で、彼女を死にかえしたのは、鳴。
〈対処〉は成功し、この年の〈災厄〉は終了した。
でも、〈夜見北中学3年3組の災厄〉はまた、繰り返すだろう。理不尽な死が、次々と起こるだろう。
それに不審を感じることも、何故か曖昧になってしまうだろう。
最初の起源に、なんの悪意もなかった。
〈災厄〉における〈死者〉にも、なんの悪意もない。
〈死者〉を見分けられるのは、鳴だけ。この年は、想と鳴に関係があったから可能だったこと。
これから先、また必ず起こるだろう〈災厄そのもの〉を止める手立てはないのか。
そのことに、震撼とさせられました。
色々言及したいことはたくさんあるんですが、既にもう冗長に過ぎるので、もうやめておきます。
ただ、「あとがき」で綾辻さんは~~もう一つの続編の構想がある~~と書いてます。
すぐには書かないそうですが、いつか読めることを楽しみに、・・・いや、怯えながら、待ちたいと思います。
(2021.01.26 読了)
この記事へのコメント