
多い・・・登場人物が多すぎる・・・。
私の残念な記憶力では追いつけないレベルに登場人物が多く、しかもエピソードも最初はバラバラ。
冒頭についている人物紹介を見てもなかなか頭に入らなかったので、前半はホントにもう本文と紹介を行ったり来たりで、ちょっと疲れました(^_^;)。
若竹七海さん、初読み作家さんですね。書評で〈パッチワークのようにエピソードが完成する〉とあって、面白そう!と思った本書『パラダイス・ガーデンの喪失』 でしたが、年末年始の忙しさにかまけて、10日ぐらいかかってしまいました(余計に記憶力が・・・)。
鎌倉にほど近い葉崎市。入場料を取って公開している個人の庭〈パラダイス・ガーデン〉、そこである朝、老女が死亡していた。
近隣の老若男女、管轄の葉崎署の面々と本部から来た管理官一同、刑務所から出てきたばかりの日本一有名な容疑者、老人ホームの勧誘をする女・・・様々な人物たちが、それぞれの理由で様々なことをしでかし、事態や事件が複雑化し、更に絡み合う。
いやもう、とにかく登場人物のエピソードも多すぎて、あらすじとか書けないですよ!
大叔母の資産を伺う若者、子供が誘拐されたシングルマザー、夫のリモートワークで葉崎市にやってきた主婦・・・、事細かに取り上げるなんて、もう無理!特に、古くからの葉崎市住民は過去に口外できない秘密を抱えていて、それが明かされるのがだいぶん後の方なので、我々読者は〈ミステリのアドバンテージ(人々の日常から、物語に関するエピソードだけを抜き出して読んでいる)〉があるはずなんですが、まあ全然わからない(笑)。
ということで、気になったことだけポツポツと。
いやぁ、葉崎署の二村警部補が、いい味出してましたわ(笑)。フェイスシールドを本部の連中に取られたからって、自転車ママさんたち愛用サンバイザーをつけ、署内をのしのしと闊歩し、行く先々で事件のヒントを上手いこと拾ってくる。ずっと車中泊を続ける根性&情熱があり、貫禄ある中年警察官としてあちこちで顔が利くし、聞き込み相手の懐にすっと入り込む能力も高い。もちろん、ひらめき力も高い。
とはいえ、いきなりサンバイザー(パッと見一時代前の安物のロボコップみたい)の女性刑事が近づいてきたら、ビビっちゃうだろうなぁ。
あと、リモートワークになったから田舎に住もうとか言って、葉崎市に来たモラハラ男。実は会社をクビになってたってことを、家族には黙ってたというのが今回の事件でバレてしまいましたね。この家族、どうなるのかしら。奥さんにこっぴどく逆襲されたらいい、と思ってます(笑)。
終始〈登場人物が多い〉と書いてますが、どの人物も一癖あるというか秘密があるというか・・・、一番マトモだったのは〈パラダイス・ガーデン〉の女主人・房子だったんじゃないかなと思います。一番巻き込まれて大変だった人ですけどね。物語のラストに、「やれることをやりたいようにやって、あとは天命を待つしかない」と彼女は述懐してるんですけど、この物語をうまくまとめた一言なんじゃないかなと思います。
どの人物たちも、色々な事情があったりして、いろんな行動をして、とんでもない展開になるけど、なんというか・・・なるようにしかならないっていうか。ねぇ。
そういえば後半、とある人物たちが入れ替わってたことが判明するんですが、それに付随するエピソードがちょっと後味悪くて、〈え~、もうちょっとライトな話だと思ってたのにな~〉と、ガッカリまでは行かないけど、結構肩すかしされた気がしましたね。
〈日本一有名な容疑者・白鳥(田中)〉の行動なんか、ホントにもう気分悪かったし。ちょっとな~う~ん。
でも、ぎょっとしたのは、一番最後に判明した、もう一回の入れ替わり。
これが、冒頭のエピソードにつながるとはねぇ。なるほど、それを読んだ瞬間に「マジか!」って叫んじゃいましたよ。
とんでもない女が居たもんだ・・・。
確かに、色々なエピソードが、最後の最後でパッチワークのようにつながって、一連の事件が(あまり気持ちのいい感じではないにしても)収まるところに収まる・・・てのは、すごかったなと思います。
(2022.01.05 読了)
この記事へのコメント