『この本を盗む者は』/深緑野分 ◎

ザッツ・マジックリアリズム!!
面白かったですよ、深緑野分さん!物語読みな私にとって「平凡な日常が呪いにより〈物語世界〉に変容してくる」なんていうシチュエーションは、大好物でございますとも!!
私設蔵書館・御倉館の管理者の娘・深冬に訪れた、『この本を盗む者は』 から始まるブック・カース(本の呪い)の世界。
深冬とその相棒・真白の冒険と、御倉館をめぐる謎の解明、大変面白かったです。
そう言えばこの作品、2021年の本屋大賞の候補作でもありましたね。

本の蒐集家であり、私設蔵書館を創始した曾祖父を持つ女子高生・深冬が、その蔵書館から本が盗まれるたびに物語世界に変容してしまう街を駆け巡る、冒険譚。
御倉の子でありながら本が嫌いな深冬だが、怪我をした父・あゆむの代わりに御倉館で暮らしている叔母・ひるねの様子を見に行った時、彼女が手にしている奇妙な札に気付く。
札には〈この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる〉と書かれてあり、深冬は突然出現した少女・真白とともに、〈御倉館の本を盗んだ者を捕まえ、本を取り戻す〉冒険に出なければいけなくなる。
札を読んだ瞬間から(正しくは本が盗まれた瞬間から)、街は物語世界に変容し始め、街の人々は物語世界の人物の役を担い始める。

真白は、御倉館の書物にはすべて一冊づつ〈ブック・カース(本の呪い)〉がかけられていると言う。御倉一族以外の人間が本を御倉館から持ち出せば発動し、盗人もろとも街は物語の檻に閉じ込められ、その本泥棒が捕まえらればブック・カースは消えるのだと。
幼少期からの嫌な思い出の積み重ねから本が嫌いな深冬が体験する物語世界のレパートリーが、どれも私の好みに合ってて、その世界そのものも楽しかったですねぇ。
願わくば、深冬が本泥棒を追い詰めるうちに途中で終わってしまう物語の全てを、終わりまで読んでみたかったです。

第一話「魔術的現実主義の旗に追われる」はマジックリアリズム、第二話「固ゆで玉子に閉じ込められる」はハードボイルド、第三話「幻想と蒸気の靄に包まれる」はスチームパンク、この3つのジャンルは分かったのですが、第四話「寂しい街に取り残される」のジャンルは何だったんでしょう?第五話「真実を知る羽目になる」は回想記でいいのかな?
これらの物語を書いていたのは深冬の父・あゆむだったわけですが、あゆむの才能すごいなぁ。

もっとすごいのは、本が大量に盗まれたことに激昂し、それまで一般公開していた御倉館を閉鎖するというかなり激しい反応をした創始者の娘・たまき(深冬の祖母)が、さらに神?と契約して「本を盗むものに対して発動する呪い」を作ってしまったことですよ。
その呪いの一部としてあゆむの物語(世に出ていない物語)を利用したというのも、業が深いなあと思います。
そして、死してなお御倉館に思いを残して深冬に対して脅しをかけてくるという、執念。・・・怖ろしいわぁ。

その祖母に対するトラウマを乗り越え、健気に街を走り回る深冬と彼女を助け力を合わせる真白、読んでいて清々しかったですねぇ!
色々大変な冒険を経て深冬は、ブック・カースの真実を知り、御倉館閉館の元凶・「大量盗難の謎」を解き、ブック・カースを生んだ存在を追い払った。
でも、そのおかげで、深冬たちの現実世界から真白とひるねは〈元から居なかったもの〉として存在を消されてしまった。

喪失感を抱えた深冬が起こした行動は、御倉館の一般公開を再開すること。少しずつ本を読み始めること。そして・・・自分が体験したブックカースの世界の物語を紡ぎ始めること。
この物語の冒頭と同じ文章が始まった時、ワクワクしてきた自分がいました。
ひとしきり文章が続いた後、登場した真白と通常営業で眠っているひるねに、私もとてもホッとしました。
現実に、物語が滑り込んできて、彼女たちは再会することができた。
深冬の「物語力」が、現実に魔術を織り込んだこの瞬間が、とても素敵でした。
やっぱり物語って、素晴らしいよね!!

(2022.01.19 読了)

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この記事へのコメント

  • 苗坊

    こんばんは^^
    あらすじから本好きにはたまらない世界観を感じましたが、入り込むのには少し時間がかかりました^^;
    壮大なファンタジーでしたね。入り込めてからは没頭でしたねー。
    深冬と真白のコンビが良かったです。
    物語って素晴らしいですよね!
    2022年01月20日 20:09
  • 水無月・R

    苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
    確かにちょっと最初の方は、エンジンが掛かりづらかったですね~。
    でも、引き込まれ始めたら、グイグイと世界に入っていけました。
    本当に、物語読みにはたまらない物語でした!
    2022年01月21日 21:38

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