『初恋さがし』/真梨幸子 ◯

真梨幸子さんだから、警戒心満載で読み始める。なんつっても、イヤミスの女王ですからね~(笑)。
帯からして【初恋はイヤミスによく似合う】なんて煽ってくるから、タイトル『初恋さがし』からほんのり浮かんでくるはずの甘酸っぱさなんて、期待しちゃダメダメ(笑)。
ということで、読ませていただきました。うん、初恋はココロの中に安置させておくのが良さそうですよ・・・ははは。

「ミツコ調査事務所」という興信所が、舞台の中心。
調査員は女性ばかりで、「初恋の人をさがします」をウリにしてるその興信所の所長・山之内光子がメインの語り手。
次々現れる依頼者は、なんだか挙動が怪しかったり、やたら結果を急いでいたり、妙な一言をつぶやいたり。
それでもサクサクと調査をし、結果を報告し、一件落着・・・かと思いきや。

私が警戒してた通りの、依頼人・調査対象・関係者などの死体量産状態に。
「やっぱりな~、この興信所大丈夫なのか?ヤバい案件多すぎでしょうよ・・・」と思ってたら、あっさり所長が容疑者になった上、取調べ中の自殺・・・ってビックリ。
作品残り3分の1ぐらいあるけど、どうなっちゃうの?と余計な心配をしてしまいましたよ。

その後を引き継ぐ語り手たちも、クセありすぎ。
そして、死体量産状態は、やっぱり続くのですよ。トリカブトの粉末(簡単に手に入るものなの?)とか、脂質&糖質過多(脳疾患とか心疾患狙い)とか、手口が巧妙というか迂遠というか。ていうか、そんなにお手軽に「始末」しちゃっていいのかしら・・・。

実は依頼人だけじゃなく、事務所の調査員、興信所の入ってるビルの管理人、関わってくる弁護士・・・と、とにかく出てくる人物たちが揃いも揃って訳アリ&問題アリ。
一つの事件には別の側面あったり、あちらの事件の関係者がこちらの事件の関係者になってたり、複雑というか内緒にしている親族関係があったり、まあなんとも絡み合っています。

挙句の果てに最終章で判明した、「センセイ」フリークの語るミステリプロット。
えぇぇぇ・・・。彼女の主張は正しいのか?彼女の小説は世に出るのか?
いやはや、何が正しいかわからなくなっちゃいましたよ。
それぞれが、自分の思ってることを吐露するけど、嘘が混じってるのでは?自分の都合のいいように、言わずに隠してることがあるのでは?

う~ん、イヤミス色は予想内に収まった感があるけど、どちらともつかない落ち着かないラストに、居心地が悪いわぁ・・・。

(2022.02.16 読了)

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