『ヒトコブラクダ層ぜっと』(上)・(下)/万城目学 ◎

相変わらず、やってくれますなぁ!万城目学さん!!
結構分厚い上下巻、上巻は読み勧めるのにはちょっと時間がかかったのですが、下巻は「これ、どうなっちゃうのよ!!」と居う怒涛の展開で、本当にとんでもない勢いで読み終えちゃいましたよ。
しかしまあ、タイトルが、謎。『ヒトコブラクダ層ぜっと』 って、なんなのさ(笑)。
とんでもなく壮大なアドベンチャー小説だという情報だけは耳に入ってしまってたのですが、それ以外の情報をシャットアウトしたまま読み始めました。

子供の頃、家に隕石が衝突し両親を失った三子の兄弟、梵天・梵地・梵人。
実は彼らには、3秒間だけ透視することができる、どんな言語でも聞き取れどうも3秒先までその言語を理解している、3秒後に自分に起こることが見える、という特殊能力があった。
そして、高校進学をせず建設会社で働いて兄弟3人の暮らしを支えた梵天には、〈恐竜の化石を発見したい〉という願望が、密かに埋もれていた。
それを最大限に刺激され、大規模な貴金属泥棒に加担してしまった彼らのもとへ、〈ライオンを連れた異様な女〉が現れ、自分に力を貸せと言いだす。
そこから、あれよあれよという間に自衛隊入隊・イラク派遣・現地での拉致誘拐事件・・・と壮大な冒険活劇に飲み込まれていく。
果たして、ライオン女の要求を満たして、彼らは帰還することができるのか?!
彼らが目にした都市遺構の真実とは?!そして、なぜ彼らだったのか、彼らの本当の望みは叶えられるのか?

いやぁ、面白かったですわ。ホントに。
世界史の知識が弱いので、〈メソポタミア文明とかシュメール人とか、名前とちょっとした情報だけはあるけど~〉的な残念なワタクシですが、それでも十分楽しめました。
全部の感想を書こうとすると、すごく長くなっちゃいますので、毎度のことながらそのへんは断念しますね。

さすが万城目さんと言うべきか、長くて壮大なアドベンチャーストーリーの中にも、要所要所で笑いをぶっ込んでくるところが、素敵です。
一番笑ったのは、梵天山にたどり着く山道をどう考えても車体が長いリムジンが通れたとは思えない・・・と梵天が(梵人だったかも?)が内心でつぶやいていたところです。ですよね~(笑)。ぐねぐねと曲がる細い山道を、多分車幅もガッツリあるリムジンが・・・。ありえないのに忽然と現れるリムジン、そこから降りてくるのは青い毛皮(ラピスラズリのコート)を纏いライオンを従えた、迫力満点の女。
天然自然の風景の中に、いきなりぶち込まれる違和感満載の事象。ギャップがとんでもないです(笑)。
まあ、自由に動き回るライオンを目の前にしたら、笑ってなんかいられないとは思いますが。

三兄弟は3秒という特殊能力があるけれど、それでも割と普通(あ~、でもそれは一面であって、やっぱり特殊なのかしら?)の男性なので、とんでもない状況になればなるほど、内心あるいは兄弟間でのポロッと出てくる感想が、我々一般人な読者と同じ(・・・何でだよ)だし、それに対するちょっとシニカルなツッコミは笑えるし、でも状況はかなり切迫してたりするしで、とても惹き込まれましたね。

ライオン女=イナンナの真実や、イナンナの姉(妹?)・エレシュキガルの物語、そしてシュメール人が消滅した理由、更に三兄弟が父母を失った経緯と彼らに3秒がある理由、全てが明かされるラストはもう本当に怒涛で、読んでて頭が煮えるかと思いました(笑)。
マジか、超高度古代文明が生まれたのはそういうことで、それが消滅したのはそういう流れだったのか、そしてその中で起きたことを回収するためにこの『ヒトコブラクダ層ぜっと』が描かれたのね!と、一瞬納得しそうになっちゃったじゃないですか!
いやあ、ホント、万城目さん凄すぎ。完全に脱帽ですわ。

イラクでの拉致事件の際、一緒に攫われてしまった銀亀三尉、最初は「私は上官だから、あなた達の安全に責任がある!とか、ちょっとうるさいな~」って思ってたんですが、新人自衛隊員である三兄弟を守ったり、ルールを徹底したり、米海兵隊たちとの間に立ったり交渉したり、このヒトはこのヒトなりに真剣なんだな・・・とちょっとずつ好感が持てるようになってたんですよね。
そしたら、なんと実は射撃の名手だった!、そしてそのとんでもない能力で三兄弟の危機を救い、最終的には3人とともに無事に帰還する、小柄ながら頼もしい仲間になって・・・カッコよかったです。

イラクから帰還して、梵天・梵地は除隊し梵天山で自分の夢に向かって作業を続け、梵人は自衛隊体育学校に入るためにトレーニングを続け、そして梵天山での再会に銀亀さん(多分昇進してるのでもう三尉じゃない)も加わって、なんかほのぼのしてたら、海兵隊(実はCIA)を辞めてイナンナに雇われたキンブリッジ、イナンナ、ライオン(実はイナンナの夫)が現れて、また自然の風景が、違和感満載状態に(笑)。
三兄弟それぞれの望みが叶いつつあり、そして銀亀さんにも「ご褒美」が与えられ?、イナンナたちは退場。

読み終えて、なんというか、ホッとしました。
色々あったけど、終わった。色々あったけど、これからも彼らは自分の望みを叶えるために生きていく。
物語が無事終了したことへの安堵(誰も死んだりなにか大きなものを失ったわけではない状態で)、彼らがきっと望みを叶えるという未来の明るさへ私自身の心が温まったこと、それ以外にも整理しがたい様々な感情が渦巻いて、でもそれが「ああ、面白かった!」とひと括りにすることもできること。
いやいや、ホントにすごかった。万城目さん、ありがとう、本当に面白かったです!

あ、そうそう。
タイトルにあった「ぜっと」ですが、ずーっと「ぜっとって、なんじゃらほい」と疑問に思ってたんですよね。
ソンビか~。アガデを守るゾンビ、それを「ぜっと」としてタイトルに入れたんでしょうけど、いまいちこれは物語の中では浸透してなかったような・・・。とはいえ、タイトルにゾンビという単語を入れちゃうと、物語の方向性が誤解されちゃうし、「なんじゃらほい」と思わせたほうがおもしろいし、まあこれはこれでいいのかな?ってことで。

(2022.03.06 読了)


この記事へのコメント

  • Todo23

    これぞエンタメ!という作品でしたね。
    映像化したら面白そうだな~と思い、じゃあ銀亀三尉は上白石萌歌さんあたりかと考えてました。
    2022年03月08日 15:37
  • 水無月・R

    todo23さん、ありがとうございます(^^)。
    上巻だけでは全くどうなるのかわからず、下巻に入ったら怒涛の展開、伏線は回収されるは、衝撃の事実は発覚するは、三兄弟もどんどん進化してお互いの絆も深まっていくし、とにかく目が離せなかったですね~。
    なるほど、銀亀三尉は上白石萌歌ちゃん。良いですね♪
    ただ、映像化するには、かなりの予算が必要そうですよね(笑)。
    2022年03月08日 19:33

この記事へのトラックバック