『キリングクラブ』/石川智健 ◎

サイコパスたちの社交場である、『キリングクラブ』
都心の地下に広大な空間を持ち、あちこちに多数の秘密の出入り口を持つそのクラブは、大儲け(キリング)の出来る成功したサイコパスたちが集う。運営元は不明、運営方法も目的も不明、所属する従業員、入会者(ゲスト)の数も不明、そんな謎だらけで壮大な組織で発生した殺人事件を追う物語。
石川智健さんは、初めて読む作家さんです。サイコパスの物語ってちゃんと読んだことなかったので、なかなか興味深かったです。

そう、いろんな物語を読んできた私ですが、ここまで真正面からサイコパスを扱った物語を読むのは、初めてだと思います(『羊たちの沈黙』は読んだことがありますが、あれは主人公は常人だったし)。
サイコパスとは〈他人の感情に共感できず、自分にとって一番合理的な手段を取る〉とか〈超越した能力を持つがゆえにそれを発散させるために暴力に走るか、支配にする側に回るかの2種に分かれる〉とか、色々と定義されていましたが、まあなんというか・・・凡人かつ小市民の私にはその区別はわかるけど、その心情には理解が追いつかないというかなんと言うか。
とは言いつつ、なんとなく(私にもサイコパスの片鱗はあるのかも・・?)なんて、疑わしく思ってしまう面も・・・。いや、でもこれは多分、私の中に残ってる〈特別になりたい〉欲が掻き立てられて、そう感じるだけなんだろうなぁ(笑)。うん、やっぱり私は凡人ですわ。

フリージャーナリストの藍子は、知人に誘われて〈キリングクラブ〉の給仕を始める。
藍子は、関わりのあったゲストが惨殺されたことをきっかけに、事件の調査に参加することになる。次々と惨殺される成功したサイコパスであるゲスト達。
キリングクラブが指定した3人の容疑者は、最終的に全員殺され、事件は終了・・・だが、それを〈面白くない〉と思った藍子は、一緒に調査をしていたクラブの番犬・辻町に罪を着せようとした末に、彼に捕らえられる。
辛くもそれを脱出しキリングクラブに乗り込んだ藍子は、自分が〈ゲームあるいはショー〉の駒であったことを知らされる。
殺人ゲームを支配し、娯楽としてゲストに提供していたのは、クラブの責任者・メヒタベルとクラブ組織全体。
最後に藍子が取った行動、その結果、そしてメヒタベルは新たな給仕にアテがないか辻町に尋ねる・・・。

犯人の予想はついていたけど、その動機は、ただの凡人の私には全く予想がつかなかった・・・。
まあ、物語の最初の方から、藍子の言動には不穏なものが多かったですもんねぇ。
ただ、被害者を生きたまま開頭し、その扁桃体を切り取るという手段の専門性をどうやって手に入れたか、ってのは疑問でしたが。
同じ連続殺人の中で唯一人クラブのゲストではなかった人物が、その鍵を握ってたわけですね。
それと、最後の被害者・脳外科医の死因は、犯人の意図するものじゃなかったという点でも、惑わされました。

藍子がキリングクラブに乗り込んでから終盤にかけて、メヒタベルのショーの開示は、私が予感していたものよりも壮大で凄惨でした。キリングクラブ、とんでもない力がある組織なのね・・・。怖。
ショーが終わり、自分を殺すのは時期尚早、自分は決定打を持ってると取引を持ちかけた藍子にメヒタベルは応じるものの、キリングクラブの仲間を続けようと言われた藍子は〈いっそのこと、楽しもう〉と決定打を打つことにする。
だが、結局はそれすら、クラブの先手が打たれていて・・・。

サイコパスがすごいのか、キリングクラブの運営側がすごいのか、判断できないけど、とにかくとんでもない先読み先読みで、いろいろなことが覆される、読者としては楽しい物語でした。当事者になるのはごめん・・・というか、多分私なんか鼻も引っ掛けられないですね(笑)。

ラストで辻町に「新しい給仕にあてはないか」と尋ねた千沙。キリングクラブは続いていく。新しいゲームがまた始まるのでしょう。その物語は、我々読者に提供されるのか、どうか。
キリングクラブのあり方から考えれば、二番煎じなどはありはしないでしょうから、ぜひ読んでみたいなと思います。

(2022.03.26 読了)

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