「縄紋』/真梨幸子 ◯

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真梨幸子さんと言えば、イヤミスの女王。
本作『縄紋』は、イヤミスと言うほどではないにしても、ちょっとエグい描写もあったし、やっぱり最後に「マジかよ!!」と叫んでしまうような展開があったりして、なかなかに楽しめました。特に後半。
ちょっと前半は、「縄文時代」の認識が甘かった私がついて行けなくて、大変でしたが(笑)。

フリー校正者の興梠は、自費出版の『縄紋黙示録』の原稿の校正を依頼され取り組み始めるが、「縄文」ではなく「縄紋」であるところから引っかかったり、古代史への知識が少ないため苦労する。歴史学に詳しい元同僚・一場を呼び出し、レクチャーしてもらうはずが、なし崩しに同居する羽目に。調べれば調べるほど、縄紋(文)文化の文化水準の高さや異様さが浮き彫りになり、また現代との関連性もかなりあると分かってきて、『縄紋黙示録』の内容や雰囲気に引きずられるようになる興梠と一場。
実は『縄紋黙示録』を著したのは、夫と娘を猟奇的に殺し拘置所に収容されている容疑者・五十部靖子。この本を出すことで「精神に異常があるため責任能力がない」と判断されることを期待しているのでは・・・?と思われている。
五十部の弁護士の小池、編集者の牛来、その前任者の望月なども、『縄紋黙示録』の異様な吸引力に引き込まれ、常軌を逸していく。

と、あらすじを書こうとして、書ききれないな~難しすぎるわ~と、途中で断念しました。
まず、冒頭にも書きましたが私が認識してた縄文時代って、それこそ作中でも一場たちが言ってたけど「縄文時代とは歴史の授業の最初の1時間で駆け足に片付ける時代」だったんで、縄文土器、狩猟文化、ぐらいしか分かってなかったんですよねぇ。
そこへ、ドカドカ色んな情報が入ってきて混乱し、更に『縄紋黙示録』の異様さがファンタジー的別世界に思えてしまうし、興梠たち現実パートでも色々不可解な事件や恐ろしい事態が繰り広げられてしまって、とにかく全体像がつかめなかったのでした。

それでもなんとか、頑張って読み進めると、縄紋時代にタイムスリップしたらしき著者が子犬になったり、烏になったり、蛇になったり忙しい(笑)。更には、縄紋人だと思っていた男に、興梠が憑依してることが判明。時代は過去ではなく、遠い未来ではないかという話になる。
・・・え?マジ?なにそれ?ちょっと待って。
ここで、完全に迷子です、ワタクシ(笑)。
更に、現実パートで興梠は一場に殺され、常軌を逸しかけていた牛来が自分を取り戻し、最終的に五十部の語り(騙り)で物語は終わる。

さてさて、五十部の著した『縄紋黙示録』は、大麻中毒者の妄想か?心神喪失を装い責任能力逃れをするための戯言か?本当にタイムスリップの経験談なのか?
そして、現実パートで大混乱を引き起こした太陽嵐やガンマ線フレアは、この後強度を増して世界中を混乱に陥れた末に、人類を衰退させるのか?そして、何万年もの後に、『縄紋黙示録』のような世界が広がるのか?
わかりませんねぇ。可能性は、なくもないですもんねぇ。
実際、電子機器が使えないことになったら、現代文化は総崩れ。それが修復されずに続くとしたら、とんでもない大混乱のあと、世紀末破滅世界が広がるでしょうねぇ。先日KDDIの電波障害があったばかりで、ちょっとタイムリーな気もしますねぇ。
・・・私にできることって、何もなさそうです。参ったな(笑)。

と、なんか脱線した感想を持ってしまいました。
ストーリーに関しては、完全に迷子です(笑)。
結局オチとしては、〈大麻中毒者の妄想?責任能力逃れの戯言?〉だけど、タイムスリップ?で体験した興梠との出会いは現実とつながるし、だとするとほんとにタイムスリップ(しかも縄文時代じゃなくて、数万年先の未来)?だし。

あと、「追記」でラストに犬を保護した篠崎が、風邪っぽい症状を感じていたのが、妙に不気味に思えました。
ガンマ線フレアの影響で地下の編集室に閉じ込められた牛来の上司・和久津も、風邪っぽい症状を感じてたでしょう?もしかして、中年~老年世代にはすでに、〈黙示録=世界破滅〉への前兆が現れて来つつあるとか?なんて思っちゃったりして。全然関係ないかもしれませんが。

(2022.07.15 読了)


この記事へのコメント

  • todo23

    縄文と言えば・・・(タイトルだけのつながりですが)
    おそらく本邦初の、本格・縄文・恋愛小説。
    『二千七百の夏と冬(上/下)』  荻原浩
    縄文人の男の子と弥生人の女の子の出会いの物語です。なかなか面白いですよ。

    http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/22289383.html
    2022年07月17日 16:05
  • 水無月・R

    todo23さん、ありがとうございます(^^)。
    縄文人少年と弥生人少女の恋愛作品!面白そうですね!
    〈読みたい本リスト〉入りしました~♪
    2022年07月17日 19:07