はぁ・・・、読んじゃったよ。読み終えちゃったよ・・・。
フィクションなのは、わかってる。わかってるけど!!
三津田信三さんの実録風ホラー短編集、何が怖いって〈フィクションなのはわかってるのに、なにか自分に障りがあるんじゃないかという気がしてくる〉ことが怖いんですよ!!
『怪談のテープ起こし』、何度もホラー短編小説の合間に挟まれる〈念押し〉にビビらされました。小心者の水無月・Rでございます。
三津田信三さんのこういう実録風ホラー短編集と言えば、『どこの家にも怖いものはいる』とか『わざと忌み家を建てて棲む』とかありましたけど、また新たな方向性が出てきましたね~。
ホラー短編の雑誌連載のため、集めていた怪談の取材テープだったり自殺者の遺言テープだったりを、担当編集者・時任女史が書き起こしてくれたのだけど、だんだん時任女史の身辺におかしなことが起こり始める。
その危機を察知した三津田さんが、時任女史に「もうテープ起こしはしてはいけない」と注意するも、女史はなんだかんだと理由をつけて書き起こしをしては、三津田さんにその原稿を送ってくるのであった。
その原稿を参考に6つの連載短編を書き上げ、それらを1冊にまとめようということになり、それらの短編に加えて時任女史に起こった怪異やそれについての三津田さんの意見を加えるという構成が決まり、校正も終了する。
そして、最後の最後に、怪異のテープがこつ然と現れ、時任女史は体調を崩し、三津田さんはそのことを終章に書き加え、物語は幕を閉じる。
~読者の皆さんが〈水〉にかかわる薄気味の悪い現象に遇いませんように~という言葉をもって。
6つの短編は実録風ホラーで、恐怖心を煽るような凝ったつくりにはなっていなくて、逆に「なんでそうなの?どうして?」という点が曖昧になってたりして、いわゆる〈投げっぱなしホラー〉なものが多く、実を言うとそんなに怖くはなかったんですよね。
ただ、「序章」「幕間」「終章」で、しつこいほど〈読んでいて、何か障りがあるようなら、読むのを止めた方がいい〉という注意喚起と言うか警告がされるのが、微妙に怖いのですよ。
時任女史に起こる怪異も、意味不明でなんとも不可解で、じんわり怖い。
そして、一番最後にこつ然と現れる怪異のテープ、三津田さんが最初から持っていたものではないそれが、何を録音したものだったかわかった時点で、どーんと突き落とされるわけですよ。
背筋が冷えるというより、なにか胃の中に重たいものが落ちてきたような、気持ちの悪さが。
なぜ、どうやって、このテープが時任女史のデスクに紛れ込んでいたのか。このテープを録音した者は、誰なのか。好奇心に負けて聞いてしまった時任女史と三津田さんにいずれ訪れる怪異が、どんなものになるのか。
全くわからない。わからないけれど、絶対になにかが起こるだろう。良くないことが。
それでも、それを書き記してしまう、三津田さんの〈ホラー作家の性〉の業の深さですよ。そしてもちろん「フィクションじゃないってば・・・」と呻きながら読んで怖がってしまう、私の業の深さですよ。
・・・ああ、怖かった。最後の最後、本当に、本当に怖かった。
さて、気持ちをちょっと切り替えるために、作中作であるホラー短編で気になったことだけ、ちょっと書きますね。
「留守番の夜」で、「叔母」に扮していた夫の目的がわからない・・・。ていうか、もともと「叔母」はいたのだろうか。
「黄雨女」と「すれちがうもの」で描かれる、だんだんに近づいてくる〈もの〉に対する対処法は何もなかったのか?と言うより、なぜ彼らが選ばれたのか・・本当に〈何もなかったのに選ばれてしまった〉のだろうか?
つまり、普遍的にホラーって転がってるものなのかもしれないですよね。気付かないだけで。・・・怖。
ちなみに、「最終章」で三津田さんは、〈実はどの短編にも〈水〉が関わっているし、時任女史に降りかかる怪異も〈水〉が関わっている〉と言っていましたよね。
私のハンドルネーム「水無月・R」にも、〈水〉が入っております。
ええ、正直言うと、読了した昨晩は、お風呂に入るのが怖かったです。
幸いにして、何もありませんでしたが。
うふふふふ・・・・。
(2022.07.28 読了)
この記事へのコメント