おお!すごく面白かった!!
巨大なAI・タイタンが世界の調整を取り、人間の世話をしているという世界観。
なんでもタイタンがやってくれるため、人間は〈仕事〉をせず〈自由〉を謳歌することになった時代。
そんな世界で、人間ではなく『タイタン』の〈仕事〉に焦点を当てた物語、とても面白かったです!
野崎まどさんは初めて読む作家さんですが、こういう作風、好きですねぇ。
水無月・R、超絶文系人間のくせに、ロボットやAIとかそういう物語が大好きです。
大好きですが、サイエンスな理論とかは、全然理解できてません(笑)。
そんな私でも、とても楽しめたんですから、非常におすすめな作品です!!
人間に奉仕し、人間のために発展し続けるAI、タイタン。
世界に12基あるその中の一つ、北海道弟子屈に拠点がある通称・コイオスが、機能不全を起こし始めたことにより、心理学を趣味としている内匠成果に〈コイオスのカウンセリング〉が依頼される。それは〈趣味〉ではなく〈仕事〉。
管理者・ナレイン、エンジニア・雷、AI研究者・ベックマンとともに、まずはコイオスの〈人格形成〉から始め、なんとか人型を形成することができたコイオスとの対話を始めた内匠は、カウンセリングを進める。
と、導入部分だけあらすじを追ってみたんですが、かなり長くなりそうなので、もうやめます(笑)。
まずAIをカウンセリングする、という設定が面白い。人類のために発展し続けるAIだけれど、その不調を対処するためにタイタンの意識?に人型(人間サイズ)をとらせ、人と会話するようにし、人的な思考回路をもたせ・・・面白い。
更に、自己を確立させたコイオスが〈立ち上がった〉んだから、もうニヤニヤしてしまう。更にそれが歩行して、シリコンバレーまで行くのである。ワクワクせざるを得ませんよ。だって、内匠が見ていたのは脳幹部分だけで、それに対応するサイズが身長1000メートルとか、スケールの大きさが半端ない。アニメみたいですよ!
〈AIをカウンセリングする〉という前知識しかなかったので、読み始めは〈こんな世界で、人間の存在意義ってなんだろう〉とか考えていて、あれかな~ディストピア的な展開になるのかな~、コイオスが刷り込み現象で内匠を母親的に慕っていくのかな?なんて思ってました。
それがまあ、まさかまさかの〈AIが巨大ロボット化して歩行〉とか、思わず「カッコいいぜ!コイオス!」って叫んじゃいましたね。
弟子屈からシリコンバレーまでの移動中に、内匠とコイオスが体験する出来事、どんどん進化していくコイオス、シリコンバレーでのUNDP(国連開発計画・タイタン開発を主導し、運用の規則を作った団体)からの人間チームの逃走劇、コイオスと12基目のタイタン・フューべとの対面活劇・・・いやあ、内容が濃い。
最初は4歳児ぐらいの外見をしていたコイオスが、どんどん体験を積んで少年の姿になり、最終的には20歳を超えたぐらいの青年の姿になり、人間的な発想だけでなく、卓越した対処能力を発揮した末に、フューべたちが密かに作っていた〈タイタンの消費機構〉であるヘカテに入っていくことになる・・・。
内匠とコイオスの別れのシーンは、ちょっと切なかったですね。この「二人」には、ずっと一緒でいてほしい気もしました。
コイオス起立から、移動、フューべとの対面、そのときに行われた人間チームの逃走、とにかく規模が大きく大混乱が起きても仕方ない状況であるにも関わらず、タイタンたちの情報開示と誘導の巧みさで人間側があまり騒ぎ立てないという状態には、ちょっと怖くなりましたね。
コイオスが起立してタイタン機能がうまく回らなくなっても、ずっと受け身で待ち続ける人間たちというのは「思考停止」だと思うのですが、なんだか恐ろしい話ですよね。でも多分その渦中にあったら、私も「いずれタイタンがなんとかしてくれるだろう」と何もせず、待ってしまうだろうなと思います。
〈仕事〉とは何か。ずっとそれについて語り合う内匠とコイオス、二人はすごく真剣にいろいろなことを考えてるんですが、読んでいる私は性急に答えを求めていたような気がします。良くないなぁ。何でもかんでも、すぐに正解だけを知りたがるのは良くない、と反省。過程も思考も、大事ですもんね。
彼らが出した答えは、〈仕事とは、影響し合うこと〉〈やり甲斐〉でした。でもそれが唯一の正解ではないし、それについて考え続けること、求め続けることが大事なんじゃないかな~、と。
働くAI・タイタンたちが自分たちを向上させるために、更に上位の消費機構を作ったのは、AIたちの〈やり甲斐〉のため。機械がやり甲斐・・・、なんとも不思議な感じがします。
人類の目的は、進化や発展ましてや繁殖ではなく、タイタンたちのために存在すること、になってしまったのかもしれません。
でも何故か、その状態は〈ディストピア〉には感じられませんでした。
ところで、逃走シーンのベックマン博士がカッコいいおじいちゃんで、びっくりしました(笑)。クラシックカーをビュンビュン運転しちゃう、囮になることを申し出て「捕まったら、全部済んだあとで助けてくれ」とか言う、それまでの温厚紳士がちょいワル爺さんみたいな印象になって、ちょっと惚れそうになりました(笑)。
雷も、エンジニアとしてとてつもない能力がある上に飄々としたちょっと軽いキャラでいい味出してたし、ナレインもずっとイヤな奴だったけど、何よりも優秀で案外人間的で、ある意味芯の通った人でしたね。
もちろん、内匠もカウンセラーとして、また成長するコイオスを見守り一緒に体験していく者として、思考が深く思いやりがあり、人間として魅力的でした。
こんなメンバーと関わったんだから、コイオスがどんどん成長したのも、うなずけるというもの。
最後に、内匠が記録した自伝に写真のコメントがついたのは、あれはヘカテの反応じゃなくてコイオスの反応だろうな、嬉しいな、と思いました。フィルムカメラ撮影が趣味の内匠に、いろいろな写真を撮ってもらいそれを見ながらいろいろなことを検討した日々を、コイオスは160年以上たった今でも、大事に思っていて、こういう反応したんじゃないかなと思うと、なんだか心が暖かくなりました。
(2022.08.10 読了)
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この記事へのコメント
todo23
壮大なるほら話。良いですね。たっぷり楽しみました。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/29552837.html
水無月・R
面白かったでしょう?・・って、私が言うのもおかしいですが(笑)。
AIの人格化、巨大ロボット化、AI人格の成長、と言うサイエンス?な部分(ツッコミどころは多々ありますが)だけじゃなく、人間たちの活劇も楽しめましたね♪