『一橋桐子(76)の犯罪日記』/原田ひ香 ◎

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原田ひ香さんの作品、まだ3作目なんですけど、なんというか「あらまあ・・・ちょっと身につまされるわぁ(笑)」と感じますねぇ。
自分の今後の経済状態に不安を持った桐子さんが、なんとかして刑務所に入るための犯罪を探す物語『一橋桐子(76)の犯罪日記』、面白かったです~。

身につまされるとは書きましたが、別に「老後が心配だから刑務所に入りたい」と思ってるわけではありません(^_^;)。
それよりもですね、「老後って、お金も大事だけど、人間関係というか、ひととのつながりが大事だなぁ」って思ったんですよね~。

両親の介護のため、正社員を退職したあとはパート仕事しかできなかった桐子さんは、年金が少ない。両親の死後、気持ちのすれ違いから実の姉とも疎遠になってしまって、一人になってしまう。
学生時代に仲良くしていたトモさんの夫が亡くなったことをきっかけに一緒に暮らし始めるが、トモさんが病気で亡くなると、二人で暮らしていた一軒家には住めなくなり、住まい探しに苦労した末に老人の多い古いアパートへ転居することに。
清掃のパート勤めを続けてはいるものの、経済状態はかなり厳しい。ある日「刑務所に入って、介護してもらう」というというTVを見て、自分もそうしようかという気になり、桐子さんの〈あまり人様に迷惑をかけないで、できるだけ長く刑務所に入れる犯罪は何か〉を模索する日々が始まる。

桐子さんが検討する犯罪が「万引」「偽札」「闇金」「詐欺」「誘拐」「殺人」と、どんどん重罪化していくので、読んでるコチラとしては、ハラハラさせられました。まあ、桐子さんみたいな常識のある落ち着いた老婦人には、どれもまともに成し遂げられなくて、怖い目にあったり捕まったりするような事はないんですが、それでもやっぱり、「そこまでやらないと、老後が心配」という状況は、胸が苦しくなってきますね。

救いは、周りの若い人たちが結構真っ当で、桐子さんをあわてて止めてくれたり、危ないことにならないか見守ってくれたり、アドバイスをくれたりすること。
桐子さんの人柄がいいから、周りに集まってくる人も桐子さんを大切に思ってくれる優しい人達になる。桐子さんの人徳ですよねぇ。
私も、見習いたいです。まぁ、この歳で自分よりだいぶ若い人たちと知り合って良い関係性を築く・・・って、言うのは簡単だけど、なかなか難しいですね・・・。

しかし「殺人」が出てきたときには、びっくり。さすがの桐子さんも断ってましたけど、普通の老女にそれを頼まないでぇぇぇ!!
究極の犯罪「殺人」の章で、「誘拐」のとき未遂で不起訴(誘拐して欲しい女子高生・雪菜との狂言誘拐だったし)とはなったものの清掃会社もクビになってしまい、安アパートに暮らすことも危うくなってきた桐子さんを救ったのも、若い人たちとの関係でしたね。
清掃に行っていたオフィスビルの青年・久遠が実は実業家だったとか、ちょっと都合がいいかなという気もするけど。
でも、桐子さんが〈犯罪で刑務所〉という手段を取らなくても、なんとか老後を過ごしていける目処が立って、ホッとしました。

更に、不動産会社の人と大家さんが「生活保護を検討し、民生委員やケアマネージャーと連携して桐子さんを見守る」という連携ネットワークを提案。・・・そうだよね、生活保護があったよね。つい「自分の生活は、自分で立てなきゃ」って、視野狭窄になってたかも、私も。
そして、公的なネットワークだけじゃなく、久遠や雪菜たちなどの若い人たちとの温かい関係も、これからの桐子さんを助けてくれるんですよね。
もちろん、桐子さんが彼らを頼るだけじゃなく、彼らとともに生きていく、っていう前向きさがあるからこそ、ホッとできるラストになりました。

実際、出所しても世間に馴染めず、犯罪を繰り返して刑務所に逆戻りをする人、そしてそれを望んでする人がいるというのは、私もTVで見たことがあります。なんだか切ないなぁ、と思います。
もちろん、そういった人々には切迫した事情があるのだろうし、桐子さんのように運よく助けてくれる人が見つからないのでしょう。
現実は、小説のようにうまくいくには難しいものですが、できるだけ多くの人がそんな切ない状況にならないことを、願いますね。

そして、私自身がそういう事にならないように。
お金の心配もさることながら、人との関わりを大事にしていきたいな。と思いました。ホントに。

(2022.09.17 読了)

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この記事へのコメント

  • latifa

    水無月Rさん、こんにちは!
    台風接近中ですね。
    被害が少ないと良いのだけれど・・・

    これ、私も読みました。
    いやーー
    ほんと明日は我が身、色々考えさせられましたよ・・・
    ちょっとそんな上手く行くかな?って処も若干あったけど、面白く引き込まれました。
    2022年09月24日 07:05
  • 水無月・R

    latifaさん、ありがとうございます(^^)。
    私の住む地方は、多少の強風強雨はありましたが、なんとか被害なく通り過ぎていきました。
    他の地域も、あまり大変にならないといいですね。

    多少ご都合なところはご愛嬌、人柄がいい桐子さんの日々を楽しく読めました。
    2022年09月24日 19:10