中高時代からの親友4人組、それぞれ性格も違うし、全く違う職業、結婚している者がいても、みんなで集まって美味しいものを食べながらワイワイ。羨ましいなぁ。
そんな彼女たちの『あまからカルテット』、楽しませていただきました。
私はまだ柚木麻子さんの作品初心者なんですが、こういうホンワカした楽しい物語、大好きですねぇ。
女性仲良し4人組、って簡単じゃないと思うんですよ。大人になってからは、特に。
仕事が忙しかったり、恋愛がうまくいかなかったり、経済的に格差が出てしまったり、結婚すれば家庭のこともあるし、本作ではまだ誰にも子供はいませんが、子供がいればそちらを優先するべきだし。人生に対する考え方も、変わってくるし。
でも本作の4人は、違った環境にあっても、それぞれがとても努力家で、自分のことを一生懸命に取り組んでいて、その上でお互いを大事に出来る。人間としての芯がしっかりあるから、素敵な人達なんですよねぇ。
長く付き合ってきたからこそよく知っていて、いい距離感を保てるのも、本当にいいんですよ。
ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理ブロガーの由香子、それぞれの恋や仕事や生活の悩み事や困り事を、本人がへこたれても皆で盛り上げて解決に持っていく展開、スッキリしましたね~。まあ、ちょっとご都合っぽいかな?ってこともありましたが、その辺はご愛嬌レベルでしたので、私的にはOKでした。
誰かが弱っていても、咲子の意外な人脈や薫子の行動力、満里子のメイク術・おしゃれスキルや由香子の料理で、励ましたり背中をそっと推したり、調べたりセッティングしたり・・・、うま~く噛み合ってる感じが、まあちょっとズルいなという気もしますが、読んでてテンポよく物事が進むし、友情の確かさ、それぞれが依存するんじゃなく自立しながら助け合ってることがとても良く伝わってきて、心地よかったですねぇ。
1話目の「恋する稲荷寿司」で既婚者の由香子以外に、みんな恋人ができたのには驚きましたけど。
紆余曲折あって、満里子はそのお相手とは別れるんだけど、最終章「おせちでカルテット」では、ちゃんと新しい出会いがあって、恋に発展しそうな感じ。みんなパートナーがいるというのがハッピーエンドなのは、やっぱり時代かな(笑)。でも私は、安定感があって、嫌いじゃありませんね。
しかしねぇ、とにかく食べ物が美味しそうで、たまりません。味の沁みたお揚げの稲荷寿司、バターの香り高い甘食、ハイボールに合う唐揚げやポテトサラダ、一昔前に大流行した食べるラー油、じっくり煮込んだ黒豆や甘く煮含めた杏。
いつもこの手の食テロ小説を読むと叫んじゃいますが、今回も。
〈おいしそう~!!誰か、私にこれ作って~!!!〉
自分で作るんじゃなくて、誰かの作ってくれたお料理が食べたいわぁ(笑)。だからこそ、4人の中で一番由香子を尊敬しますわ、私。
1人ずつの困りごとを1章ずつ解決していき、皆でお料理を持ち寄っておせちの四段重を完成させよう・・・となった最終章。
関東に襲来した大雪のせいで集まるはずの仲間は足止めを喰らってるのに、翌日午後に来るはずの姑は前乗りしてくる・・・という薫子の緊急事態発生。
やれ、これで大掃除はしたのか、おせちも作れないなんて普通の家庭に育ってないと嫌味連発、自分はちゃんとしていたとマウンティング・・・とんでもない鬼姑。
いや、急に早めに来たアンタも悪いっていうか、前もって連絡するのが礼儀だろうがよ!と読みながら吠えてました、ワタクシ。
足止め食らった仲間たちも、色々な困難を乗り越えて、持ち寄るはずのおせちは食べきってしまったという状態でも薫子の危機に駆けつける。
彼女たちの困難も、ちょうど彼女たちの停滞を打破するきっかけになるようなもので、すごくスッキリしましたね。
集合してみれば、酔っ払った嫁姑が仲良く〈簡易おせち〉を完成させてたという(笑)。
簡易おせちのアイデアの素晴らしさ、簡単さもさることながら、嫁姑の関係回復がとんでもない早さでしたね!
私だったら、こんなにすぐにあの姑と仲直りできそうにないな~。偉いわ、薫子は。
軽く読めて、お腹が空いて、篤い友情にほろっと来て、大変楽しめました。
4人の個性や特性がそれぞれ違うからこその、素晴らしいカルテットでした!
そうそう。
文庫解説の酒井順子さんが「女の友情ストーリーが最も激しい転調を迎えるのは、これから」と書いていましたが、それは確かにそうですね。
子育て、夫婦の関係、介護。全くペースがばらばらになってしまうからです(←一応私も子育て経験者)。
でも、私も大事な友だちとの交流は細く長く続いてまして、介護とか看取りとかはまだなんですが、お互いを尊重して、これからも仲良くしていきたいと思っていますし、続いていけると思ってます。
「カルテットというのは、一人一人がソロとしても活躍できるほどの個性を持つ人の集まりだからこそ成立するもの」とも、酒井さんは書いてらっしゃいます。
彼女たちが、一度は中断期間があったとしてもまたカルテットを組んで、楽しい調べを聞かせてくれるようになったらいいな、と柚木さんに期待しています。
(2022.12.01 読了)
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