You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、面白くて絵画鑑賞初心者にもよく分かる解説をされている山田五郎さん。本書『怪物〈闇の西洋絵画史(3)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの3冊目。
本書に取り上げられた怪物は、だいたい〈ゆるふわ系〉なので、見ていても「怖い」より「くすっと笑える感じ」がします。
You Tubeで五郎さんの話し相手を務めるワダさんも、「可愛いですね」を連発してましたもんね(笑)。
「Ⅰキリスト教の怪物」「Ⅱギリシャ神話の怪物」「Ⅲ画家が幻視した怪物」と3章に分けて怪物たちを紹介。
想像上の生物、動物がいくつも融合した姿、人面獣身、獣面人身・・・。
様々に醜悪だったり、ゆるゆるして弱そうだったり、聖者に負けたり、群れ集まりすぎてその集合体が気持ち悪かったり、どの絵画にもツッコミ処がたくさん見つかります(笑)。
私が一番ツッコミを入れたくなったのは、一番最初に紹介されるヒエロニムス・ボスの《快楽の園》の地獄の王。亡者を丸呑みしては、そのまま排出(意味あんの?)、頭にお鍋をかぶってご機嫌モード、・・・アンタほんとに「地獄の王」なんか~い!!(笑)。
あと、怪物じゃなくて天使にもツッコミを入れたいです。
ルーカス・クラーナハ(父)の《最後の審判》の天国の周りを囲む雲の中に、頭と羽だけ突き出してわらわらと存在する天使たち。
・・集合体恐怖症の人が見たら、こっちのほうが怖いに違いないと思うんですよ!私、別に集合体恐怖症じゃないと思うんですが、一瞬「キモッ!」って思っちゃいましたもん。魚卵のイクラが怖い人、絶対これ苦手だと思うww
オディロン・ルドンのモノクロの怪物たち、なんか哀愁というかアンニュイというか、妙に郷愁をそそる感じがしましたね。《蜘蛛》は「まっくろくろすけ」みたいだし、《『エドガー・ポーに』Ⅰ.眼は奇妙な気球のように無限に向かう》は「目玉おやじ」の元ネタらしいし・・・。
ダリが描く、溶けゆく人体や足だけ長く華奢な動物も「怪物」扱いなんですね(笑)。
まあ、昆虫みたいに細くて長い脚の象に追いかけられたら、多分泣いて逃げるな、私・・・。そういう意味では、かなり怖いかも。
「おわりに」で、~今日の我々にとって恐ろしいのは異形の巨大生物よりも、目に見えないウイルスや放射線~とありますが、本書が出版されたのは2021年3月。
2年経った今(2023年3月)でも、コロナウイルスの脅威は取り除けていませんし、放射線の恐怖も緩和されてないどころか、ロシア・ウクライナの戦争によってより身近な問題になりつつあります。
参るなぁ・・・、ホントに。
うふふと笑える可愛げのある「怪物たち」のたくさん出てくる本書で、ちょっと悲しい気持ちになってしまいましたが、そこはどうしようもないので、冒頭に戻って「地獄の王」にツッコミを入れ直して口直しをしたいと思いました。
(2023.03.19 読了)
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