『髑髏〈闇の西洋絵画史(4)〉』/山田五郎 ◎

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You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、絵画鑑賞初心者の私にもわかりやすく面白い絵画解説をしている山田五郎さん。本書『髑髏〈闇の西洋絵画史(4)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの4冊目。
表紙のどんよりとした背景に浮かび上がる、青ベースにもかかわらず妙に派手派手しい衣をまとった髑髏が印象的です。これは・・・クリムトかぁ・・・なるほどねぇ。

実は私、絵画モチーフとしての〈髑髏〉って、結構好きなんですよね。
確か、中学の美術で何をテーマに描く授業だったのか忘れましたが、髑髏を描いた記憶があります。多分、ちょっと中二病的な感じで(笑)。画力がだいぶ悲惨だった私が描いたものとは比べ物にならないぐらい意味深く様々な髑髏の絵画が、本書では紹介されています。

髑髏といえば、まずは〈死〉の象徴。「メメント・モリ」「ヴァニタス」「アダムの髑髏」、どの章で解説される絵にも〈死〉が描かれています。
メメント・モリ(死を想え)とは、人は必ず死ぬのだから何をしても無駄・無常である・・・ではないのだそうです。
「後悔しないように生きよ」ということ。貧富貴賎を問わず死は誰にでも平等に訪れる、だからこそ限りある生命を謳歌せよ、芸術家達は死神が自分に寄り添う姿を描き、死も生も性も人の一生には必ず沿うてくるもの、山積みになる髑髏は反戦のシンボルとなり、ポップアートの象徴アンディ・ウォーホルすら死の影に怯える。
思っていた以上に、髑髏というモチーフは、多くの依頼主がいて、画家の想像力を刺激し、鑑賞する人々に強烈な印象を与えるものだったのですねぇ。

ヴァニタス(虚栄)という言葉、なんとなくは知っていましたが、本書で紹介される「美しい花や財宝、権力の象徴や芸術などとの対比」として描かれる髑髏の、カラカラに乾燥した様子が、なんともリアルで空恐ろしく、描写が鮮やかであればあるほど、虚しさが極まって感じられましたねぇ。

今作ではわりと、五郎さんの解説は真面目な感じがしました。
「死」というものをモチーフに描かれている絵画たちには、あまり笑いを誘うようなツッコミはしづらかったのかしら(笑)。

ちなみに、裏表紙にポツンといる「矢を持った髑髏」なんですが、パッと見た時に「ふふっ」って笑っちゃったんですよね。なんか、妙に可愛くて。
本文中で、ヒエロニムス・ボスの《死と守銭奴》の一部だったことが判明したんですが・・・。
「ああ!ボスか!なるほどなぁ(笑)」と。ワタシ的に、ボスと言えば、《快楽の園》なんですわ~(笑)。あの、お鍋かぶってご機嫌な地獄の王を始めとする、ゆるふわな怪物たちの絵。私が可愛いなぁと思ってしまったのも、ボス的ゆるふわ感が漂ってたからなんでしょうね。
《死と守銭奴》にも、ゆるふわな怪物ちゃんたちが描かれてます。死に瀕している人が描かれてるにも関わらず、妙にポップな感じがするのも、結構好きな感じです(笑)。

(2023.08.06 読了)


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