『横死〈闇の西洋絵画史(5)〉』/山田五郎 ◯

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You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、絵画鑑賞初心者の私にもわかりやすく面白い絵画解説をしている山田五郎さん。本書『横死〈闇の西洋絵画史(5)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの5冊目。
表紙のジョン・エヴァレット・ミレイの《オフィーリア》を見た途端、「樹木希林さんの広告!」と思ってしまった私は、かなり俗物です(笑)。

数年前、「死ぬときぐらい、好きにさせてよ」というコピーでこの絵を模して樹木希林さんが水死体を演じた広告があったのですが、再現性が高いのに希林さんの個性が強烈に伝わってくるその構図に、目を奪われましたねぇ。
本文中で~~夏目漱石が「風流な土左衛門」と評した死~~とあり、そういえば学生時代にそんなことを知った記憶も蘇ってきました。
風流と土左衛門(水死体)という、普通に考えたら両立し得ない表現が見事に当てはまる絵画ですよね。素晴らしい。
絵画としての構図も彩りも、美しい。発狂して歌いながら穏やかに溺れ死んでいく豪奢なドレスの美しい令嬢、という「横死」というテーマにぴったり。

「横死」とは、非業の死・不慮の死をさす言葉ですが、幼くしての死、病に冒されての死、事故による死、裏切られての死・・・どの死を描いた絵にも、見る者の心を激しく揺さぶるインパクトがあります。
「聖書の死」「神話の死」「権力者の死」「哲学者の死」「佳人の死」「民衆の死」、描かれる死者の属性は違うし、描かれた時代・技法・伝えたいこともそれぞれに違うのに、暗い画面から伝わってくる虚しさや苦々しさに、「まだ、死にたくないな・・・」と感じてしまいました。
痛いことや怖いことが嫌いな私は、死ぬのが怖いです。本作を読んで、更にそれに拍車がかかってしまった感がありますね(笑)。
虚しさや苦々しさも、(自分に与えられる苦痛としての)嫌いなことに加わってしまいました。

やっぱり絵画として一番気に入ったのは、《オフィーリア》です。オフィーリアの悲劇性、明るい画面に色彩豊かに描かれる花々、美しい情緒がありますよね。
次点は、ジョージ・フレデリック・ワッツの《発見された溺死者》。顔かたちもはっきりしない暗い画面に、両手を広げて川辺に打ち寄せられた女性の水死体。悔恨の情念が、津波のように押し寄せてきたように感じました。

前作『髑髏〈闇の西洋絵画史(4)〉』でも、死を描いた絵画がたくさん紹介されていましたが、本作で紹介される絵画のほうが悲惨性が高かった気がしますね。やはり「横死」というテーマのやるせなさの為せる業なのでしょう。
流石にテーマがテーマだけに、いつもの五郎さんのユーモアあふれる解説は影を潜めて、おとなしめでした。

(2023.08.29 読了)


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