『おひとりさま日和』/大崎梢ほか(アンソロジー) ◎

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まず、タイトルがいい。『おひとりさま日和』
かつて〈お一人様〉といえば、なんだか寂しい孤独な人が無理に頑張ってる感・・・というイメージがあったようですが(数十年前の感覚)、私は〈おひとりさま〉大好きですよ。一人で外食も出来るし、映画も買い物も旅行だって、どこにでも自分の好きなようにいけますもんね。
本作では、40代から80代まで幅広い年代の〈おひとりさま〉である理由も様々な女性たちが、その生活を自由に楽しんでいる様子が描かれていて、心強かったですね。

たしかに、これらの物語のように都合よく行かないことも多いし、やっぱり経済的に大変なことも多いから、この1冊を読んで「よし、自分も〈おひとりさま〉しちゃおう!」なんて軽く考えてはいけないけれど。
それぞれが、覚悟を持って生活してること、その上で〈おひとりさま〉の自由を充分に謳歌する気概があること、つまりは〈ひと〉としてしっかり生きているっていうことが、とても良かったです。

「リクと暮らせば」大崎梢
レンタル番犬と暮らすことになった、照子。
「幸せの黄色いペンダント」岸本葉子
緊急通報用ペンダントを身につける、ナツ。
「永遠語り」坂井希久子
叔父の残してくれた山で染織家として生きていく、十和子。
「週末の夜に」咲沢くれは
映画について語れる友を得た、中学校教師の頼子。
「サードライフ」新津きよみ
一人暮らしは不安だからと娘たちに上京を迫られた、千枝子。
「最上階」松村比呂美
マンションコミュニティを思いついた、成美に新たな未来が開けるかも?

夫は3つ年上だし、基本的には女性の方が長生きするし、私も〈おひとりさま〉になる可能性が高いんですよね。
そう思って、数年前から〈シンプルライフ〉を目指して、断捨離したり、そういった暮らしを楽しんでる女性の特集の雑誌を見たり、老後のお金について考えたり、色々情報を漁っています。
実は、本作も情報収集の一環でもあったわけですが、情報として参考になった部分もありますが、やっぱり物語として楽しめましたねぇ。

それぞれ、自分の生活を楽しんでいる。
大変なことも多いし、お金もやっぱり余裕がないとつらいし、一人であることの不安もあったりするけれど。
いつか私に訪れる可能性のある、〈おひとりさまライフ〉がいい感じに、〈いいお日和〉として穏やかに楽しめる日々になってくれるかもな~と、明るい気持ちになれました。
おひとりさまは、自由ですからね~。自分のペースで、自分のやりたいことをやれるって、素敵なことですもの。

「リクと暮せば」のレンタル番犬というシステム、いいですよねぇ。
お散歩や予防接種などのお世話は、レンタル会社がやってくれて、月10万・・・。10万円という数字は高いけど、一緒に暮らしてくれる〈守護騎士〉がそれで雇えるなら、安い気もするな~。もちろん、それだけの経済的余裕がないと・・・、私には出せない額だけど。
家の中で、おとなしくしている大型犬。覚えるまでは、郵便配達にだって警戒してくれる。不審者(連絡無しで帰国した息子)には、勇敢に飛びかかってくれる。セコムより即時性が高いもんねぇ。
頼りになるし、もふもふは正義だし、お金があったら私も頼みたい(笑)。

「永遠語り」の山での生活は・・私には無理だなぁ。まず、寒いのダメだし。不便なのも、イヤだし。
なにより、染織家という繊細な仕事が、私には向いてない(笑)。
それでも、十和子が叔父のことを想いながら、ずっとこの生活を続けていくことを選んだのは、切ないけれど苦しいけれど、美しいなと思いました。いつか、叔父が十和子を迎えに来る日まで、彼女はずっとずっと叔父の養分を摂取した山の恵みを活用しながら、静かに静かに生きていくのだろう・・・と。

どの物語の主人公も、おひとりさまを楽しめる心の余裕を維持するという、強さがあってよかったです。
私も、いつかそうなったときに、その強さを持ち続けて、楽しんでいけるようにしたいと思いました。

(2023.12.31 読了)



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