You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、絵画鑑賞初心者の私にもわかりやすく面白い絵画解説をしている、山田五郎さん。本書『聖獣〈闇の西洋絵画史(8)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの8冊目。
シリーズ前半の『怪物〈闇の西洋絵画史(3)〉』と対になる本作ですが、善きものを描いているせいか、ちょっとインパクト薄めでした(笑)。
それでも、〈ペガソス〉と〈グリフィン〉と〈ヒッポグリフ〉と〈ヒッポカムポス〉の違いとか、全然わかってなかったので、なるほどな~と。翼がついてて馬みたいに見えたら全部ペガサスだと思ってました(笑)。で、怪獣っぽかったらグリフィン(笑)。
上手い画家は馬を描くのが得意というのは、五郎さんのYou Tubeですでに学習済みでしたが、たしかにどのペガソスもヒッポグリフも、なかなかに美しい肉体美(?)を誇る描かれ方をしてますね~。躍動感があります。
色々な聖獣たちの中で、美しいのはやっぱりユニコーンじゃないかなと思います。
純潔な処女にだけ懐くという、その習性からくる真っ白で無駄のない筋肉質なその肉体、処女とともに描かれるときの慈愛に満ちたおだやかな眼差し、もちろん純真さを示す女性も美しく描かれている。
とはいえ、〈魔性の女〉で有名なギュスターヴ・モローが描くユニコーンと女性たちには、清純な美しさの中に妖艶さも秘めた憂いを少しだけ浮かべている者も居たりして、複雑ですね。
伝説の聖獣たちだけじゃなく、実在する動物たちも、聖なる象徴として描かれる物が沢山。
鳩や白鳥、子羊や鹿なんていいう〈聖獣〉であることがメジャーな動物はもちろん、ペリカンや大鴉、豚や鯨などのあまり〈聖なる存在〉として認識されてないような動物も、色々な謂れがあって〈聖獣〉として扱われてるんですね。
ペリカンに「親鳥が自らの胸を嘴で突き、流れた血で雛を養う」という伝説があるとは、知りませんでしたねぇ。そこから慈愛の象徴となった、と。ペリカンというと、大きな嘴の下にある喉袋に魚を溜めて巣に戻り、吐き出した魚を雛に与える、ちょっと変わったフォルムの鳥っていうイメージしかなかったので、聖獣としてキリストの磔刑図によく描かれるなんて、知らなかったです。
様々な動物たちの色々な特性を、正邪両面ともに意味づけるのは、人間の勝手な解釈。
それでも、美しく力強く描かれる聖獣には、やはり聖性が感じられました。
ちなみに、本書の中で一番私が素敵だなと思ったのは、ギュスターヴ・モローの《一角獣》。モローの絵の質感、元々好きだったのですが、この絵の右側に横たわる裸体の女性の柔らかそうな肉感とユニコーンと見つめ合う視線の穏やかさが、とても美しいと思いました。
同じくモローの《妖精とグリフィン》も、青と金を基調とした幽艷な雰囲気が幻想的で、心惹かれましたね。
(2024.02.26 読了)
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