『楼閣〈闇の西洋絵画史(9)〉』/山田五郎 ◯

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You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、絵画鑑賞初心者の私にもわかりやすく面白い絵画解説をしている、山田五郎さん。本書『楼閣〈闇の西洋絵画史(9)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの9冊目。
シリーズ前半の『髑髏〈闇の西洋絵画史(4)〉』と対になる本作・・・ってあれ?髑髏と楼閣は、対になるのかしらん(笑)。

髑髏は人間の頭蓋骨、楼閣は建築物、全く違うものであるわけですが、何故か共通するものを感じてしまいました。
静かに乾燥した世界観?虚栄の果に崩れ行く虚無感的な?
端的にいえば、「私のイタいアンニュイ嗜好(笑)」を刺激するような〈何か〉ですね。

本書で紹介される楼閣の絵画は、「バベルの塔」「宮殿・神殿」「理想都市」「空想楼閣」「廃墟」の5種に分類され、絢爛豪華な巨大建築、建造不可能な入り組んだ構造、人々のざわめきや歓声が聞こえてくるものから一切の音が切り落とされたかのような静寂を醸し出すもの、人知を超えた存在が隠れていそうなものなど、多種多様。

実際の建築物を描いたものだけではなく、画家の想像力表現力を駆使して画題に取り込まれたそれらの存在感は、とてつもなく強烈でした。
特に「バベルの塔」。たいてい建築中のものを描いているのですが、「これは完成せんやろ(笑)」と思ってしまえるぐらい、とにかく大きい。そりゃ神様も怒るよね、と思えるレベルに、無駄に大きく労力もかかりすぎているのですよ(笑)。

「廃墟」で取り上げられたジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージの《ローマの景観:通称ミネルヴァ・メディカ神殿》のモノクロの世界や、カスパー・ダヴィと・フリードリヒの《樫の森の修道院》に流れる陰鬱さ、〈滅びの美学〉と称されていますが、まさにそう。
「無人楼閣」における静寂さなんて、「絶対私の後ろになにかいる・・・!振り返っちゃダメなやつやん!!」って感じます。
なんというか、本当にこういう系統は〈イタいアレ〉を刺激するわぁ(笑)。

そうかと思えば、私の大好きなヒエロニムス・ボスの《快楽の園》では、なんじゃこりゃ?っていうぐらいポップな色合いで、わけのわからない建築物が描かれています。しかも、裸の人物がたくさん(かなり人口密度高め)、うららかな午後をエンジョイしちゃってます。
いやあ、いいですなぁ、ボス。地獄のゆるふわ怪物も可愛いけど、地上の楽園における意味不明建築・乗り物・人々の行為・・・笑っちゃうしかない。ナニやってんですか、アナタ方は?(笑)って感じで。楽しそうだなぁ(笑)。

シリーズ後半の〈白〉は、ちょっとインパクトが弱いし、五郎さんのツッコミも激しくはないんですが、その分〈西洋絵画の奥深さ〉もしみじみ感じたりしますね。
今まで全く知らなかった絵画、描かれるものの経緯や背景や暗喩するもの、雰囲気など、本当に色々あるんだな~と見ていて感心します。
本シリーズも、あと1冊。楽しみにしていますし、このシリーズ以外にも、お手軽に絵画を鑑賞したり読み解いたりできる五郎さんの著書に、これからも期待しています。

(2024.03.13 読了)

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