『物語の種』/有川ひろ ◎

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コロナ禍の閉塞感でちょっと煮詰まっていた私達に、有川ひろさんからの小粋な贈り物。
私達から集まってきた〈物語の種〉から、有川さんが芽吹かせてくれた素敵な〈物語〉たちが、10編。
その名のままに本作『物語の種』は、読者である私の中にほっこりと花開いただけでなく、滋味深い果実すら与えてくれました。

いやあ、もうホント、たまりませんなぁ。
どの物語も、ほっこりするし、キュンキュンするし、甘酸っぱいし、ニヤニヤしちゃうし、ときめくし、なんか・・・こう、心が内側からあっったかく発光してくるような感じがしましたねぇ。

「SNSの猫」
猫派にはたまらん。しかもだんだん甘酸っぱいし!!
「レンゲ赤いか黄色いか、丸は誰ぞや」
夫婦のぽんぽんと進む会話が楽しい。
「胡瓜と白菜、柚子を一添え」
孫の漬物の好みを競い合う義父母、嫁のテクニック勝ち(笑)。
「我らを救い給いしもの」
〈好き〉があれば、耐久力は上がる。
「ぷっくりおてて」
祖父と孫の夏休み。ガバガバ設定の公式化。
「Mr.ブルー」
宝塚愛炸裂!一生善きヅカ友・・・!
「百万本の赤い薔薇」
この夫婦は、素晴らしいなあと思うわ~。
「清く正しく美しく」
自分の進退こそ、清く正しく美しく。
「ゴールデンパイナップル」
よさこい!よさこいですよ!元高知県民のワタクシ、ダダ上がり(笑)。
「恥ずかしくて見れない」
後輩くん、頑張れ(笑)。

どれもが、ホントに楽しく読めました!
久しぶりに、有川さんの「甘酢っぺぇ~!!」とのたうちまわれるような物語の数々を、読みましたなぁ。
ぽんぽんと飛び交う、勢いと洒落の効いた会話、〈好きなもの〉に対する熱くて真摯な情熱、まっすぐに背筋を伸ばして生きていく強さ、読んでいて本当に心から伸びやかな気持ちになれました。ホント、有川節、たまらんわぁ・・・!!!

「胡瓜と白菜、柚子を一添え」『ゆず、香る』の二人が再登場したことに、大歓喜。
あの頃は友人で、恋人時代を経て、結婚して、子供まで生まれて。
義父母の張り合いの上手をゆく彼女の、頭の回転の速さよ!上手を行っても、誰も傷つけないその匙加減。
お見事!というしかない。素晴らしいです。

「ゴールデンパイナップル」『阪急電車』みたいな構成にときめきながら、「電球頭」なスーパーの上司が若者の威嚇にビビりつつも真面目に答えたら逆に毒気が抜かれちゃって周りの人たちがほっこりするところに、私までほっこりしてしまったり。
入れ替わり語り手の中に、「よさこい祭りで踊るために帰省する予定」の女性がいて、それだけでテンションマックスになったり(笑)。
うん、〈よっちょれよっちょれ〉だよね!街全体が浮足立ってきて、熱気がすごいことになっちゃうんですよ、〈よさこい祭り〉って!
少女期のたった3年半、高知に住んでいたことがあるだけなのに、私の心の故郷みたいに感じちゃってますんで(笑)。

「Mr.ブルー」「清く正しく美しく」「恥ずかしくて見れない」、宝塚沼にどっぷりハマって、縦横無尽に愛を放出しまくった物語を結実させた有川さん。
宝塚の舞台は1回だけ見たことがありますが、そりゃもうド迫力でした。男役さんの色気あふれるかっこよさ、正直この世のものとは思えなかったですもん!周りのお客さん方の熱量にビビって、ハマらなかったのは、幸いだったのかどうだったのか・・・(笑)って感じです。
Mr.ブルーの「自社製品をジェンヌに使って頂くに値するものに!」という矜持。そしてそれに倣って髪をド金髪に染めて、製品テストに挑むヒロイン(「Mr.ブルー」)、そんな先輩の潔さに惚れはじめ、ついに宝塚沼にも足を踏み入れてしまった後輩くん(「恥ずかしくて見れない」)。
この3人の軽妙なやり取りと関係性に、とにかくニヤニヤしちゃいましたね!微笑ましくて可愛いし、逞しくて憧れるし、真っ当で筋が通っててカッコいいし、なんていうか・・・ホントに、いい!!
「清く正しく美しく」も、エステサロンに勤める女性が、自分の生き方を恥じないものにしたいと方向転換するきっかけになったのが、元ジェンヌが販売してるダリアの球根の美容成分を使った石鹸やクリームなど。売り場の女性のスラリとした美しさから「元ジェンヌだ!」って判るぐらい、やっぱり凛とした雰囲気があるんでしょうね。素敵だなぁ。
〈清く正しく美しく〉端的にしてワンダフル、私も心掛けたいなって思いました。

これらの10粒の〈物語の種〉から花開いた物語たち、どれも本当に素敵でした。
全部に事細かに、言及したい!でも、今まで書いた分だけでも、冗長が過ぎるので、ぜひ皆様がお読みになって、それぞれの萌えに〈のたうち回って〉頂きたい(笑)。

この作品が書かれるきっかけになった「コロナ禍」には、自他ともに辛い思いもたくさんがありますが、それでも芽吹いた物語を楽しめる事ができたのは、本当にありがたいと思っています。

(2024.03.29 読了)

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この記事へのコメント

  • todo23

    ほほう、絶賛ですね。
    私はやや否定的。
    お得意の「大人のラノベ」で行くならもっと弾けて欲しいし、じっくりと読ませるような物語でもなく。。。
    とは言え、読んでいて楽しいのは間違いないのですが。

    http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/32234595.html
    2024年04月02日 17:04
  • 水無月・R

    todo23さん、こんばんは(^^)。
    エンタメ全開の有川節が、大好物でございます。
    じれったくって、甘酸っぱいお話に、のたうち回ってニヤニヤが止まらなかったです。うふふ。
    好きなものには一途に好きと言えることが、素敵だなと思いました。
    軽さを良しとするか、物足りないとするかは、それぞれですよね。
    次の作品は、お眼鏡に叶うものだといいなぁ。と思います。
    2024年04月02日 19:32