千早茜さんは、曖昧に揺れ動きながらいつしか芯を見出して、そこへ踏み出していく心情を描くのが、ホントに上手いですねぇ。
本作『マリエ』でも、アラフォーの主人公・まりえの、離婚~その後の生活~新しい出会いと迷い~そして心に決めた方向へ踏み出していく様子がつぶさに描かれていました。
ただねぇ・・・、まりえは恵まれてると思うんですよ。本人がちゃんと掴んできたものの結果だから、ずるいということではないんですが。
責任はついて回るものの役職にも着いていて、都心で余裕を持って一人で生活できるだけの収入があり、7歳年下の男性と出会って微妙な関係を恋人関係にすることのできる魅力(容姿だけじゃないけど)があり、年齢の離れた話し相手がいたり、婚活をはじめる勇気や思い切りがある・・そんな女性だからこそ、こんなふうに〈オトナの女〉な物語になるというか。
アラフィフでしがないパート労働者でただのオバハンな私の、ヒガミかもしれませんけど(笑)。
「恋愛がしたい」という夫と2年掛けて離婚を決心して、新たに生活を始めたまりえ。
コロナ禍も波がありつつも少しずつ落ち着きを見せ始めたころ知り合った由井くんとは、自宅で小麦粉料理を教える仲だけど、彼は曖昧な行為を見せながらもそれ以上の関係に踏み込んでくる様子もない。
別れた夫から「積み立てていたお金を分けるのを忘れていた」と返されたお金を使ってしまおうと「結婚相談所」に登録して、〈作った自分〉で出会いを繰り返し、由井くんと恋人関係になり、結婚相談所で紹介された一人の男性と〈真剣交際〉をするか判断する3回目のお見合いをし。
コロナに罹った由井くんから自分にも感染、由井くんに結婚相談所のことがバレて、離れられてしまって。
物語のラストで、まりえは由井くんに電話をかける。自分がパートナーに望むのは、世界を共有することなのかもしれないと思いながら。
このあと、まりえと由井くんは恋人関係に戻るのか。
実は、あまり気になりませんでした。多分、2人は感覚的に情緒的に似ているから、たぶんもとの関係に戻れるだろうな・・・という気がしましたし、案外友人関係に戻っても、全く別々に生きていくことになったとしても、一人の人間としてきちんと独り立ちしているから、不安があまりないような気がします。
それよりも気になったのは、元夫の森崎。
自分から「恋愛がしたい」と離婚を切り出し、2年も掛けてまりえを説得して離婚成立させたにも関わらず、時折しょーもないLINEを送ってきたり、恋人ができたまりえに「仕事が早いw」と揶揄したり、未だにまりえを「お前」呼ばわりしたり。
さびしんぼか?かまってちゃんか?!!・・と、イラッとしました。「別れた妻でも俺のもの」、とでも思ってんですかね。
結婚相談所の色々も、なかなか息苦しいな~と思いました。
〈男性に好まれるように作ったメイク・髪型・衣装〉で写真撮影をし、普段の自分と全くかけ離れたその様相でお見合いに行き、話の弾まない相手と時間を過ごした上に相談所のルールを破った付き合いを求められたり、無料の家事労働や介護要員として見られていたり。
そのくせ、女性側が身内を介護してることに対する男性側の拒否反応は当然のものと捉えられていたり。
そういう世界での出会いから結婚、うまくいくための条件のすり合わせ、世知辛いけど致し方ないことなのかもしれませんが、やっぱりなんだかなぁ・・・。
一人暮らしをするまりえの日々が優雅なのが、羨ましくもあり、多分私にはできない丁寧さだなと思ったりも(笑)。
一人暮らしどころか家族と暮らしてる今だって、粉こねて皮から中華料理作ったりしないですもん、私。
生活にひと手間掛ける、ってことが優雅につながるんだなぁ・・って痛感しました。ひと手間掛けるぐらいだったら、ラクして本読んでいたいです(笑)。
(2024.04.04 読了)
この記事へのコメント
苗坊
私もこちらの作品を読みました。
まりえとほぼ同い年の私ですが、共感できるところはほぼなかったです^^;私が結婚願望がないからでしょうか。
私も水無月さんと同じくまりえは恵まれていると感想に書いていました。一人で生きていけるからある意味選択肢があって、心にも多分余裕があって。まりえが本当に結婚したいのかそれともそこまでしたくないのかもよく分かりませんでした^^;
元夫の言動は意味が分からなかったですよねー。腹ただしい(笑)
私も同じく小麦粉から何かを作るくらいなら読書する時間を増やしたい人です(笑)だから水無月さんの最後の文章にとても共感しました^^
水無月・R
私は結婚してる身ですが、まりえにとっての「パートナー」とは、結婚になるんだろうか、恋人じゃだめなんだろうか・・・?という思いは、ありましたね~。
私も、まりえを理解できていないと思います。
最後の一文に共感して頂き、ありがとうございます(笑)。