You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、絵画鑑賞初心者の私にもわかりやすく面白い絵画解説をしている山田五郎さん。本書『殉教〈闇の西洋絵画史(10)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの、堂々最後の10冊目です。
シリーズ前半の『横死〈闇の西洋絵画史(5)〉』と対になる、本作。
〈横死〉は「非業の死」であり、〈殉教〉は「キリスト教における教義のために甘んじて受け入れる死」であるとすると、明確な対であるというよりは対比なのかしら。
キリスト教にあまり思い入れがないため、本書に取り上げられる絵画に関して今ひとつ関心が持てなかったことを、先に告白しておきます・・・。
ごめんなさい、五郎さん・・・。
でも、西洋美術の理解には、キリスト教の知識があったほうがより深まるので、ざっくりと読み流しつつも「いろんな拷問方法でなくなった聖人は、その方法に関わる出来事の守護聖人になったりするのね」ということを理解したりはしました。
しかし、殉教というテーマのみで、これだけの数の絵画が取り上げられる(多分これは主要なものであって、もっとたくさんあるんだろうと思います)のですから、「殉教図」から「信じるもののためであれば、苦痛にも耐えられる」ことを教えられた人々がたくさんいた、ということなんでしょうね。
逆さ十字、火炙り、煮え湯責め、矢衾、斬首、かなりリアルに描かれるそれらの殉教図。結構エグいんですが・・・。
シリアスな画題なので、五郎さんのノリの良いツッコミは少なめですが、ラインハルトの画家《聖ヨハネの「殉教」》の「煮え油を浴びて逆に若返る超聖人」にはニヤリ。なんと、聖ヨハネは煮え油責めも毒殺も乗り越えて、天寿を全うしたという、とんでもない聖人だそうで。拷問ですら、アンチエイジングになってしまうとは、聖なる存在ってすごいのね(笑)。
レオン・ボナの《聖ドニの殉教》の「自分で拾い墓まで運ぶ。だって自分の首だもの」に至っては、電車の中だというのに吹き出してしまいました。相田みつをですか?(笑)。斬首された自分の首を持ち運びながら、説教をして歩いたって・・・。そんな説教を真顔で聞いて、「なるほどキリスト教は素晴らしい」ってより傾倒したり改宗する人がいたりしたんだろうか(笑)。奇跡と言えば奇跡だけど、なかなかにグロい光景だと思うんですが。
カラヴァッジョの作品が、非常に多く取り上げられていました。
たしかに、殉教というテーマに似合いますねぇ、カラヴァッジョの「キアロスクーロ(明暗対比)」画法。陰鬱で、刺激的で、物語性が高い。
本作で、シリーズ終了。
残念だなぁ。すごく面白かったです。
《闇の~》シリーズは終わりとしても、なにか新しいシリーズでこういった軽く読める(鑑賞できる)本を、また出して欲しいですね。
もちろん、YouTubeの動画も毎回楽しく視聴させていただいてるので、そちらも無理のない範囲で、続けて頂きたい。
五郎さん、応援してます!!
(2024.04.21 読了)
この記事へのコメント