久しく読んでいなかった奥田英朗さんの〈伊良部シリーズ〉。
しかし、そんな長い休養期間(笑)をものともせず、パワーアップすらして帰ってきましたよ、トンデモ精神科医・伊良部が!!
今回、なんと伊良部がワイドショーの『コメンテーター』を務めるという、という放送事故多発しか目に浮かばない事態から、物語が始まります。
うん・・・、だよねぇ(笑)。
前作『町長選挙』の時も、「伊良部って、本当は名医なの?そうなの?!」って、書きまくってましたよ、私は。
それは、年も前のことなのに、いまだに覚えてます(笑)。
で、本作でも、ついつい〈伊良部って、ホントは名医なの?!すごい精神科医なの?!〉が、頭をぐるぐる回ってしまっていました。
・・・いや、絶対に違うんだけどね。
違うんだけど、なぜか、患者たちはみんな回復しちゃうのよ。
「行動療法」と称して伊良部(時には看護師のマユミまで)の欲望やらおふざけやらに付き合わされる患者たちにとっては、迷惑極まりないはずなのに、結局は自分が籠っている殻をぶち破る結果になって、彼らは回復して通常生活(ただし伊良部の影響は残ってるので、ちょっとクレイジーな傾向がある)に戻っていく。
そして、たぶん、彼らは再発しないでしょう。
「行動療法」というか「ショック療法」ですよねぇ。
他の医者じゃこうはいかない(だって普通のお医者さんは、こんなにぶっ飛んでない)し、たぶん他の患者では同じ療法は効かないんでしょうねぇ。オーダーメイドな療法といえば聞こえはいいけど、たぶんそんなことはなくて、行き当たりばったりなのに、なぜかその患者にとって一番いい効果が出る。・・・何故だ(笑)。
「コメンテーター」
ワイドショー番組でコメンテーターになった伊良部。
伊良部の好き勝手な発言&マユミの存在で、人気者に?
「ラジオ体操第2」
あおり運転や公共マナーを守れない輩に怒りを覚えるサラリーマン。
だけど、その怒りを抑え込むばかりだったのを、逆に爆発させるように促す伊良部。
「うっかり億万長者」
引きこもりの億万長者トレーダー。
伊良部に散財させられ、結局は何のために金儲けしてるかわからなくなったトレーダーは、全額ユニセフに寄付することにする。
伊良部母とその愛犬パンジーちゃん登場(笑)。
「ピアノ・レッスン」
広場恐怖症のピアニスト。
マユミのロックバンドのライブに参加させられ、勢いで「バッキャロー」と叫んだり思い切り演奏したりで、すべてを吐き出して、スッキリ。
「パレード」
社交不安障害の大学生。
引きこもり中学生とともに、行動療法のボランティアに駆り出される。
ショック療法を希望し、ハロウィンの渋谷のパレードに参加することに。
うん・・・メチャクチャだ(笑)。
だけど、なんというか、いやな感じの悪意が一切ないんですよね。
伊良部が、ホントに我欲の塊で患者を振り回してるのに、〈いやがらせ感〉がない。
だから、患者も一生懸命取り組んで、無我夢中で行動するうちに、自分の周りに張り巡らせた「殻」の存在に気づいてそれを勢いよく打破して、回復するんですな。
自意識過剰という殻は、現代社会では、厚くなるばかり。それをぶち破るきっかけを的確に与えられるんだよなぁ、伊良部って。
・・・やっぱり、伊良部って、名医なのかしら。ううん、違う、絶対に違う。だけど、すごいな(笑)。
これからも「伊良部は名医?・・・ううん、絶対違うんだよね」と自問自答しながら、このシリーズを読んでいきたいです。
(2024.07.04 読了)
この記事へのコメント
latifa
これ私も読みました。
安定の面白さで何度も笑いました。
ほんとにね、あんなに破天荒なのに、結構名医なの?って思っちゃいますよね。
ラジオ体操のが一番おかしくてお気に入りです。
https://latifaa.hatenablog.com/entry/2025/09/22/065719
水無月・R
「ラジオ体操第2」、主人公のオジサンに共感しきり(笑)。でも、きっと伊良部は私には別の治療法を推奨するんだろうな(笑)。オーダーメイドな無茶振り・・・。
これからも、伊良部の活躍?欲の爆発?を読んでみたいです。