『狩りの季節(異形コレクションLII)』/井上雅彦 監修(アンソロジー) ◯


ワタクシ、自分が中途半端な〈耽美好き〉〈怪異好き〉だという自覚があります(笑)。
そんな私にとって〈異形コレクション〉のシリーズは、実は憧れであり、生半可な気持ちで踏み入れてはならない神域でもあり・・・。
ずっと、存在は知っていたし、多分私の好みに合う作品がたくさんあるだろうなぁという予測は、してたんですけどね。
とうとう、その中の一冊に手を出してしまいました・・・。
井上雅彦さん、このアンソロジー『狩りの季節』は・・、私の〈狩られる側〉的性質を、グリグリと抉り出してくれちゃいましたよ!

いやはや・・・。
大抵の人間を〈狩る側〉と〈狩られる側〉に分類するなら、私は狩られる側ではあると思います。
ただ、基本的には世の中は狩り場ではなく、平々凡々に生きていく世界が広がっていて、特殊な事情が発生したとき突然その対象者にとっての世界が狩り場になるんだとは思うんですけど。
その特殊な事情って、些細なことだったりとんでもないことだったり、並行世界だったり彼岸だったりして、普通はありえないけど案外誰でも陥るものかもしれない・・・なんて感じてしまったんですよねぇ。
そこから妄想がちょっとでも膨らめば、もちろん私は〈狩られる側〉で。
息を潜めて物陰に隠れ、対抗手段を考えてもあっけなく躱され、かといって諦めておとなしく狩られるまでのカウントダウンなんて怖くてできないわけで。

そんなメンタル&性質の持ち主の私が、こんなアンソロジーを読んだ日には、狩りのバリエーションの豊かさに目が回り、追われるものと同調して動悸が激しくなり、狩られるものの反撃とその成功にホッとし・・・となかなかに心臓に負担がかかっておりました(笑)。

「天使を撃つのは」柴田勝家 
天使を狩っている男と盲目の少年。馬車に同乗したものが知った真実。
「哭いた青鬼」黒木あるじ 
青く濡れたような体を持つ鬼。一つだけ願いを叶えてくれるというが。
「ヒトに潜むもの」上田早夕里 
数多くの人間が、擬態生物に侵食されているとしたら。
「贄のお作法」清水朔 
多くの人間を惨殺してきた男が、山奥の隠れ里で。
「赤いシニン」井上雅彦
とある幽霊騒動を解く女性と助手、関わり合った少年。実は彼らは。
「七人御先」霧島ケイ
7人の亡霊が、次々に犠牲者を取り込む。その現象の発生の醜さ。
「えれんとわたしの最後の事件」澤村伊智 
霊能者と訪れた屋敷の真実と、捻じ曲げられたわたしの記憶と真実。
「ブリーフ提督とイカれた潮干狩り」牧野修 
あちら側の世界の残留物を拾いに行かされる男。呪と聖を駆使して、切り抜ける。
「ゲルニカ2050」平山夢明 
世界は戦争の最中。銃撃戦ゲームに明け暮れる男が陥れられた。
「インヴェイジョン・ゲーム1978」伴名練 
1970年代のスケバンたちに異星人が取り憑く。それはスケールの大きなゲームの予選だった。
「昼と真夜中の約束」王谷晶 
誇り高き種族の一員が、たった一つの些細な約束にこだわり、転落していく。
「ドッペル・イェーガー」斜線堂有紀 
自分のデータを虐待することは、悪なのか。
「夜の祈り」久美沙織
多分、パンデミックが席巻した世界。看取り師のぼく。
「キングズベリー・ラン」真藤順丈 
狩るものと狩られるものの循環に、捕らわれた男。
「夜の、光の、その目見の、」空木春宵 
謎に包まれた画家を取材するライター。彼女が得たものは。

あまりにも多くの「狩り」が描かれていて、一つずつを取り上げることは出来ませんね。
一番印象的だったのは、「ブリーフ提督とイカれた潮干狩り」。あちらの世界とこちらの世界が干渉し合う「潮汐域」での攻防、魔術医という主人公の設定、主人公に内包される相棒の存在、作品に添えられた井上雅彦さんの解説によれば、牧野修さんのシリーズ作品の最新作だとのこと。うわ~、気になる~。・・・だがしかし、私、ハードボイルド苦手なんだよなぁ(笑)。どうしましょ。

「インヴェィション・ゲーム1978」、私のちょっと上の世代の「スケバンブーム」を彷彿とさせる人物造形に、ニヤニヤしちゃいましたね。
スケバン大戦争になるかと思いきや、ゲーム元締めに殴り込もうというラストが爽快でした。

澤村伊智さんの「えれんとわたしの最後の事件」も、相変わらず魅せてくれますね~。
やや怖い話という感じで普通に読んでいて、突然ラストに突きつけられた真実には、切なくなりました。まさか、そんな。
ある意味、沢村さんらしい「理不尽」さがありました。

本作を読もうと思ったきっかけは上田早夕里さんなのですが、読んだことのある作家さんも初めての作家さんも。
斜線堂有紀さんの「ドッペル・イェーガー」『本の背骨が最後に残る』に入っていて、読んだことがありました。
王谷晶さんや空木春宵さんなど、1回だけ読んだことのある作家さんも、他も読んでみたくなったりして、〈アンソロジーの罠〉は健在でした(笑)。

最初にも書いたんですが、〈異形コレクション〉のシリーズ、気になりすぎる・・・!だけど、すごい数が出てるんですよね・・・。迷っちゃうなぁ・・・。
う~ん・・・、まあ、また機会があったら・・・かな。なんせ〈読みたい本リスト〉が長すぎるから(笑)。

(2024.10.18読了)

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