いやぁ・・・、今回も、「鈍器な製本」でしたねぇ、京極夏彦さん。
毎度ながら〈巷説百物語 シリーズ〉の分厚さ・重さに驚愕。
そして、図書館の返却期限ギリギリ(次の予約待ちの人がいるので延長できない)に休日返上で残り1/3をなんとか読み切ったという・・・。
そんな駆け足の読書で、やはりこのシリーズの重厚さには大変苦戦しました。
次々出てくる化け物遣いたち、歴史に実在する重要人物たち、江戸末期に起こった様々な事件。
『了巷説百物語』というタイトル通り、このシリーズが終わるにふさわしい〈大仕掛け〉の物語でした。
総州の狐釣り・稲荷藤兵衛(とうかとうべえ)は、看板は掲げぬながらも「どんな嘘も見抜く〈洞観屋(とうかんや)〉」の稼業も持っている。そんな藤兵衛にある日〈依頼主は老中首座水野越前守〉である、という洞観の依頼が入る。
水野の改革を邪魔立てする〈化け物を操り人心を誑かす者共〉をあぶり出して欲しい、というのである。
依頼を受け江戸に入り、黒部の猿・源助と猫絵のお玉という2人を仲間にし、調べを進めた藤兵衛の前に現れたのは、〈御行の又市の一味〉たちであった・・・。
又市一味を水野に指し、一旦はその洞観仕事も終わったかと見えたが。
少々の時を経て藤兵衛は、今や江戸一いや日の本一の両替商である福乃屋から「店や寮に現れる化け物をどうにかして欲しい」という依頼を受ける。
化け物は人為であると既に中野の晴明神社の憑き物落とし・中禅寺が見抜いているのだが、相変わらず化け物は出没するし用心棒たちは役に立たぬから、とのことであった。
中禅寺!中禅寺って、あの中禅寺ですよね?〈百鬼夜行 シリーズ〉の京極堂の、先祖ってことになるわけですよね!
その出で立ちも「黒手甲に黒脚絆、清明桔梗紋の黒装束」と。憑物落としですよ、世に化け物などいないと理ですべてを明らかにする、あの憑物落とし。
はぁ・・・すごい。〈巷説百物語 シリーズ〉も〈百鬼夜行 シリーズ〉も〈弔堂 シリーズ〉も、全部つながってるんですねぇ。
・・・と、ここまで来て我に返りました。
あらすじ書くのも、出来事をピックアップして語るのも、なんだかダラダラ長すぎる気がします。ていうか、既に現時点でこの文章が冗長すぎる(笑)。
だいたいね、厚さ5.5cm、重さ1kg超え、1100頁を超える超大作なんですよ。
しかも〈了〉とつくだけあって物語は集大成、今までの二つ名持ちの化け物遣いたちがどんどん出てくる、天然役者な百介さんはふらふらしてるけど化け物遣いたちはなんとか身バレしないように巻き込まないように苦心する、起こる事件は壮大過ぎる、・・・キャラもエピソードも濃すぎるんですよ・・・!!!
今回のこの物語は、〈千代田のお城の大掃除〉なんでしょうか。
幕末のあの混乱の時代を、武士の世の中を〈農本〉にするのか〈資本〉にするのか、国の在り方・民の在り方、建前と本音、改革とは何か、様々な人々の思惑と欲と意地が入り乱れ、怒涛の勢いで全面的な戦いがあり、中禅寺の憑き物落としと藤兵衛の洞観の術で、諸悪の女から悪を見切る。
なんとも、大ボリュームでした。
今回、戦闘シーンが多かったです。又市はできるだけ人死を出さない主義だけど、敵側は関係なく人外レベルの戦闘力を持った者共を投入してくるから、おぎんや玉泉坊や右近が満身創痍になりながら、戦闘に関する判断力ととてつもない身体能力を存分に発揮し。
その描写がかなりリアルで、武器が空を切る音や激しく飛び散る血しぶきなど、耳に聞こえる目に見える気がしました。
京極さん、戦闘シーンもこんなに迫力をもって描けるなんて、とんでもない表現力というのでしょうか、本当にすごい作家さんだなと、つくづく感嘆しました。
実は、全編にわたって又市の名前は出てくるし、色々な仕掛けの準備はしているようなのですが、本作の語り手・藤兵衛の前には又市は最後の最後にちょっとだけ姿を表すだけです。
それも、百介を遠目から見守っていたタイミングに、偶然その場に藤兵衛が現れたから。
前作『後巷説百物語』で、哀愁老人として又市一行に思いを馳せていた百介。
彼を、遠くから見つめていた存在は、きっと又市だけじゃなかったんじゃないかな・・という気がしました。
愛されてるなぁ!百介さん!!化け物遣いたちはみな、自分たちがその身を置けない〈昼間の表の世界〉を象徴するかのような真っ直ぐでふわふわとした百介が大事だったし、その存在に救われていたんでしょうね。
ちなみに、数ヶ月前『絡新婦の理』を読んだ時に〈神をも恐れぬ製本〉である京極本は電子書籍だと今ひとつ実感が湧かないなんてワガママを言ってたのですが、本作『了巷説百物語』はちゃんと図書館で借りてきたんですよね。
そして、なんと今回、時間が足りないから職場での昼休みに読もう、と通勤カバンに入れて持ち歩いたんです。
・・・・うん、重いし嵩張るし、休憩室では(何この人・・・)な目で見られるし、大変な思いをしましたわ~(笑)。
紙の本と電子の本と、どっちがいいんでしょうなぁ・・・(遠い目)。
(2024.11.26 読了)
水無月・Rの〈巷説百物語シリーズ〉記事
この記事へのコメント
yori
とうとうこの物語も終わってしまいましたね。
寂しさはありますが、ラストシーン、何とも言えぬ余韻があって救われた思いです (^^♪ 確かに、京極作品のすべては繋がっている。そんな気がしますね。
というわけで今は「鵺の碑」を読んでいます。昨年中に読み終わる予定がダラダラと伸びています。相変わらず蘊蓄が長いので 苦笑
水無月・R
このシリーズは、私が京極作品にはまるきっかけでした。
学生時代に江戸時代の〈怪異〉系の文学をちょっとかじったことがあり入りやすかったのもありますが、やはり重厚な構成、物語運びの絶妙さ、魅力的な登場人物たち、非常に惹き込まれるシリーズでした。
終わってしまうのは残念ではありますが、ほかの京極作品をじっくり読んでいきたいと思います。
〈百鬼夜行シリーズ〉もまだまだなのですが…(笑)。