毎度ながら、京極夏彦さんの作品のボリュームは、尋常じゃない(笑)。
本作『病葉草紙』も、ソフトカバーながら、厚みは3.5cmを超え重量も600gを超え、通勤バックの中での存在感半端なかったですよ・・・。
もちろん、職場の休憩室で奇異の目で見られましたしね、慣れっこですけど。
八丁堀近くの藤左衛門長屋で起こる騒動を、大家の息子・藤介をワトソン役に、店子の久瀬棠庵が〈虫〉の仕業になぞらえて解決するという、割と軽いノリで描かれていて、ボリュームのわりに読みやすかったですよ~。
隠居大家の父に代わって、長屋の管理や見回りを担っている藤介。
本草学者である久瀬棠庵は、店賃を年払いしてくれる優良店子なのだが、読み書きのために年中座りっきりなので、ついつい気になって様子を見に行ってしまう。
ある日、長屋の店子・善兵衛が死亡し、孫娘が殺したと自供するのだが、それを見て棠庵は〈虫の仕業である〉と告げ、騒ぎを収める。
それから棠庵は、藤左衛門長屋で起こる事件、藤介の父の友人の長屋で起こった騒ぎ、近隣の八丁堀の親分がかかわる事件、棠庵自身が地方へ出掛けた際に関わった娘の絡む事件、など様々な事件に対して〈虫の仕業〉になぞらえて次々と解決していく。
もちろん、棠庵が提示する虫は、本当はいない。こういった症状にこんな姿の原因があるのでは、という想像上の生き物が書物に記されているだけだし、事件を穏便に解決するためにそれを利用しているだけなのである。
その〈嘘〉がわかっているのは、言い出しっぺの棠庵と解決のために使い走りをさせられた藤介だけ。
そんなユーモラスで軽い物語が7つほど続き、いつも「訳が分からん状態」で解決に至らされる藤介が、最終章で覚醒(笑)。
悪事に加担することは出来ないと逡巡する棠庵を脇に次々と手を打ち、誘拐事件と商家主人の毒殺事件を解決して、物語は終わる。
棠庵が藤介に見せる〈虫〉の図が、各章のタイトルページに描かれているのですが、なんというか「ゆるキャラですか?」ってぐらい、緩いんですよね(ちょっと軽妙でカワイイ気もする)。ていうか、こんな虫が体の中にいたら、そりゃ具合も悪くなりそうだわ。・・いや、そういうことじゃないけど。
貧乏長屋だけどそれぞれ個性のある住人が和気あいあいと生活している様子、隠居大家の息子という藤介のなんとも気の抜けた立ち位置、変わり者の棠庵を受け入れる住人や藤介たちのおおらかさ、読んでいて楽しかったです。
江戸の庶民の普段の生活を、垣間見ることもできました。
本作で終わりでもいいし、棠庵と藤介コンビがこれからも活躍してもいいし、どっちもありかな。
理詰めながら嘘も使える棠庵、棠庵の手足となって周りに軽く扱われながらも解決の道筋を作る藤介、二人のやり取りがテンポよく(時に空回ることもあるけど)、気軽に読めましたね。
〈巷説百物語 シリーズ〉や〈百鬼夜行 シリーズ〉のような、迸る薀蓄&怒涛の博覧強記、ではありませんでした。
虫の想像図のような、ゆる~い感じが、京極作品にしては、珍しかったですね。
(2024.12.25 読了)
この記事へのコメント
yori
あら、こちらは存じ上げませんでした。京極さんの新シリーズですか? 短編集なのですね、まあそうは言っても中編くらいのボリュームはあるのかも 笑
いずれトライする日が来ると思いますので、その際にはまたこちらまで伺いますのでよろしくです (^^♪
水無月・R
新シリーズ、なのかな?
私はわからなかったんですが、帯によれば『前巷説百物語』につながる物語だそうです。
『前巷説~』に、久瀬棠庵が出ていたのかしら?
割と軽く読めますので、ぜひ。
遊びに来ていただける日を、楽しみにしています♪