『時を歩く ~書き下ろし時間SFアンソロジー~』/東京創元社編集部編 (アンソロジー)〇


水無月・Rは、超絶文系人間である。
そのくせ、書評で科学が進んだ未来の物語に文学的情緒を感じると、SFの「サイエンス」な部分についていけないのに、ついつい手を出してしまうのでございますよ。もてぬ者の憧れ、というものもあるかもしれません(笑)。
本作『時を歩く ~書き下ろし時間SFアンソロジー~』も、書評に惹かれて手に取った一冊です。
・・・難しかった~(笑)。
創元SF短編賞の受賞者である著者たちによる、様々な時間SFを、堪能しました。
・・・うん、理解はしきれてないです。

「未来への脱獄」松崎有理 
刑務所で、タイムマシンを作る2人の虜囚。成功?したの?
「終景累ヶ辻」空木春宵 
繰り返すタイムリープの中で、少しずつ己を昇華する方向に近づいていく。
「時は矢のように」八島游舷 
人間の意識活動の停止という危機に向け、人体の精神と運動能力の加速をすることになるが。
「ABC巡礼」石川宗生 
セミ・フィクションの旅行記の聖地巡礼を続ける人々。いくつもの流派が派生し・・・。
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」久永実木彦
タイムトラベルが可能になった世界。未来の事故を防ぐために現代から派遣される者がやったことは。
「ゴーストキャンディカテゴリー」高島雄哉
VR世界で火星に引越しし、とあるプロジェクトを請け負った者の30億年。
「Too Short Notice門田充宏 
死亡が決定した男。体感時間を引き延ばした最後に彼が願ったこと。

このアンソロジーを読んで、わかったことがあります。
〈水無月・Rは、時間系のSFは苦手〉ということです(笑)。
超絶文系人間だから文学的情緒が云々と冒頭に書きましたが、どうもそれだけではないらしいです。
機械(ロボット)系のSFは、その機械に感情移入して読めるけど、「時間という概念」に感情移入ができない。
とにかく〈雰囲気読み・キャラ読み〉な私のアタマでは、「概念」というものをきっちり理解できないので、どうにも読み進めるうちにこんがらがっちゃうのですね。
そんなわけで、あうあうと呻きながら本書を読了し、「アカン、これ系は私に向いてない」と悟ったのでした。
「未来への脱獄」「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」なんかは、キャラ読みできたので問題なかったんですけどねえ。

ちなみに「時は矢のように」「To Short Notice」の〈体感時間の引き延ばし〉って、理論的にはあり得ると思うけど、そこまでして時間を引き延ばしても叶えたいこと・・私にはあるかしら。まあ、「読みたい本リスト」をどんどん読んでいきたいとか、そういうのはあるか(笑)。
何回も時間を大幅にスキップし地球を救うプロジェクトを片手間にこなしてきた人物を描く「ゴーストキャンディカテゴリー」は、この2作とは反対なのかな?
同じ時間SFといっても、全然とらえ方が違って面白いですね。

「To Short Notice」のラスト、メッセージを受け取った存在はきっとそれを忘れない、メッセージを残した者たちの思いが報われるかどうかは、ずっと未来にならないと分からないけれど、でも少しでも希望が持てそうで、とてもよかったです。アンソロジーの最後にこの作品を持ってきた構成、素晴らしいと思いました。

空木春宵さん、久永実木彦さんは、ここ数年で「私の好みに合うかも~」と思った作家さんでしたので、読めてよかったです。
ほかの作品も読んでみたいと思います。

(2025.01.01 読了) 

この記事へのコメント