『平安ガールフレンズ』/酒井順子 ◎(エッセイ)


平安女流文学の代表格といえば、紫式部の『源氏物語』と清少納言の『枕草子』。
彼女らに加えて、藤原道綱母・菅原孝標女・和泉式部を「友達を紹介する」かのようにつづった本作、『平安ガールフレンズ』
酒井順子さんのおかげで、私も彼女たちにより親しみが持てるようになりました。ありがとう!

高校時代に『枕草子』を読み、自慢しいのいけ好かない女と苦手意識を持っていた清少納言に対して評価が変わったのは、そこから数十年ののちに読んだ小説から。
そのあと、酒井さんの『枕草子REMIX』で「そうそう!敬愛する定子様のサロンを盛り上げるためだったのよね!」と盛り上がりったものです。
そんな清少納言をはじめとして、まじめで内にこもっちゃう紫式部・耐え忍ぶ藤原道綱母・元祖オタク気質な菅原孝標女・恋多き和泉式部の5人の人生を丁寧に紹介。
なんとなくは知っていても、それぞれ細かくエピソードが紹介されるたびに「え~、知らなかった!!」「私も似たような感覚ある~」「こんな時代でも、やっぱりそうなのよねぇ」と共感の嵐でした。

知らなかったのは、孝標女が30歳過ぎても結婚もせず、実家ニートをしてたことですねぇ。勧められて宮仕えをしてみても、あまり積極的でない彼女には耐えられず、実家引きこもりにUターン(その後、結婚はしたようですが)。
そんなところも、オタク気質なのかなぁなんて、ちょっと笑っちゃいました。
なんせ彼女は、少女時代に「物語を読みたくて、等身大の薬師仏を作って祀る」ことまでやってのけた、オタクの鏡でしたもんね。

兄弟親王に相次いで愛され、そしてやはり相次いで急逝された和泉式部の恋愛体質、私とは全く感覚が違うのでそこには共感はないのですが、残される側の哀切、そこから立ち直っての娘と一緒の宮仕え、再婚・娘の死去・・・ドラマティックな生涯を過ごした彼女の紆余曲折への強さは、現代女性にも当てはまるものがあると思いました。

酒井さんの手にかかると、平安女流作家たちも現代女性と同じ「生々しさ」をもって、イキイキと私たちに魅力をアピールしてきてくれますね。
私は、5人とも好きですが、中でもやっぱり清少納言のサバサバ明るい面に、うらやましさを感じます。
多分、一番近いのは道綱母かな~という気がします。彼女の「老後に不安を抱いて養女をもらう」という行動に、「この時代はそういう手があるのか~」と、ぼんやり感心。のちの彼女がどうなったかは記録がないそうですが、穏やかに幸せな日々を過ごしていてくれたらいいな、なんて思ってしまいました。

(2025.01.05 読了)

この記事へのコメント