いやはや、森見登美彦さんらしい作品でしたなぁ!!
迷走する登場人物たち、パラレルワールドが入れ子細工、ハラハラする展開からの大団円、なんかもうホントに楽しかったです!
ヴィクトリア朝京都でワトソンが『シャーロック・ホームズの凱旋』を描いたこの物語、非常に良かったです!!
京都がヴィクトリア朝でシャーロック・ホームズがスランプで、っていう始まり方からして「え、ちょっと待って、なになに、どゆこと??」なのに、何故か自然に京都の町に女王陛下や辻馬車やガス灯が溶け込んで描かれていくのが、すごいですよね(笑)。さすがモリミー。
ヴィクトリア朝京都のシャーロック・ホームズは、「赤毛連盟」事件の失敗で、以前から感じていた躓きが明確になり、スランプに陥ってしまう。
それによって、ホームズの活躍を雑誌連載をしていたワトソンも、休載を余儀なくされる。
全くスランプから脱出できないホームズの下宿(寺町通221B)に、同じくスランプのモリアーティ教授が越してきて、更に向かいには最近探偵として名声を挙げつつあるアイリーン・アドラーが事務所を構える。
ホームズはアイリーンとの対決で気力を取り戻すかと思いきや、なすすべなく洛西ハールストン館の竹林に庵を結んで隠棲しようとしたり、モリアーティ教授の失踪にショックを受けたり、引き受けた事件をすべてアイリーンに丸投げして自分は下働きに徹した末に、引退を宣言。
更に、再度ハールストン館の謎に取り組んだ末に、失踪。ホームズとモリアーティ教授を救出するために、異界への入り口に向かおうとするワトソンだったが・・・。
そこから世界は一転して、ヴィクトリア朝ロンドンに。ロンドンでは、すべての犯罪を牛耳るモリアーティ教授に対抗するホームズが、絶体絶命の危機にあった。身を挺してホームズを救出したワトソンは、ホームズとモリアーティ教授を連れて元のヴィクトリア朝京都に帰還する。
う~ん・・そうなんだけど、足りないのよねえ(笑)。
荒唐無稽でハチャメチャで、だけど登場人物たちの愛すべき造形、京都とロンドンの意外な類似性や「京都に横文字名のイギリス人たちが闊歩し辻馬車が疾走する世界」の自然さ(地名や地理はぜんぶ京都に倣っているのに)、この作品の面白さを表すには、私ごときの文章力じゃ全然足りませんのよ。致し方なし。
私、本家本元の『シャーロック・ホームズ』シリーズは、子供のころ児童版みたいなのをちょっと読んだことがあるだけで、なんとなくの知識はあるもののよく知らない、っていう状態で読んだのですが、問題なく楽しく読めました。もちろん、知ってたらもっと楽しめたのかもしれませんが、ラスボスのモリアーティ教授がホームズのよき友になるとか、原作ファンの方には許せないかもしれませんねぇ。
カールストン館の〈東の東の間〉とは何か?という謎に関しては、全く理解できてません。
ワトソンは〈東の東の間〉に魔力が宿っているのではなく、この世界そのものが魔力によって創られていると言っていましたが。
どちらにしろ、この世界(ヴィクトリア朝京都)の魔力が失われることなく、登場人物たちが幸せなピクニックを楽しむことのできるラストを迎えられてよかった・・・と、心から思いましたね。
と、主要なストーリーに関してつらつらと書きました。
もっともっと色々書ける気もするんですが、すでに冗長な文章になってるので、あとちょっとだけ。
どの人物も、ホントに愛すべき心温かさがあって、彼らの軽妙な会話がとても心地よかったです。
最も好きなのは、ハドソン夫人。活劇には参加しないものの、ホームズやワトソン、その他の人物たちの心の拠り所となれる懐の広さと愛情深さ、すてきだなぁと思いました。
それと人物ではないし全然重要じゃないんだけど、厳しい京都の冬を乗り越えてふてぶてしく貫録を増したという「金魚のワトソン」の存在も、なんかモリミーらしくていいなぁと。
スランプ中に自棄を起こしたホームズに、「新たな助手」として任命されたという金魚のワトソン。実は表紙で、ホームズの目の前に漂ってる浮かんでる目つきの悪いぶちの金魚、造形からしてすっごくモリミーっぽいですよ(笑)。なんかいいわぁ。
まあ、とにかく、〈モリミー版・シャーロック・ホームズその凱旋物語〉、すっごく面白かったです!!
(2025.03.16 読了)
この記事へのコメント
todo23
”流石の奔放さですが、も一つ何か心に残る、例えば「爽快さ」とか「もの悲しさ」と言ったエモーショナルな読後感が欲しかった。”
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/33512483.html
水無月・R
そうですねぇ、エモーショナルな読後感・・・は、足りなかったかもしれません。
私の中で「竹林で庵を結ぶ」が出てきた時点で、「モリミーと言えば竹林、竹林と言えば美女、う~ん、ファンタスティック~♪」と、すべてを許してしまった感があります(笑)。