『文豪の死に様』/門賀美央子 〇


表紙のインパクトが、すごすぎる(笑)。
小舟の舳先に座った芥川龍之介。裏表紙に向かうと、その小舟を操っているのはガリガリの河童。その背景には岡本かの子を描いた漫画。
そして表紙に戻れば、白い文字で『文豪の死に様』
そりゃ、〈文豪〉たちがどんな死に様だったか、気にならずにはいられませんて。
著者門賀美央子さんが選び抜いた、近代文学の〈文豪〉たちの死に様(つまりは生き様)、なかなか興味深かったです。

選ばれしは、樋口一葉・二葉亭四迷・森鴎外・有島武郎・芥川龍之介・梶井基次郎・小林多喜二・岡本かの子・林芙美子・永井荷風。
それぞれ、どんな作品を物し、どのような生涯を経てきたかを描き、晩年や死因に関して言及。
各人にサブタイトルでどういう死に様だったかを、一言で言い表しているのですが、簡潔にして極めて印象的、そしてツッコミ処がきちんとある。
著者の略歴に大阪府生まれとありましたが、なるほどオチへの持って生き方が自然で解釈の仕方も人間味がありますなぁ。

それぞれの死に様一つ一つに私の感想を加えていっても、冗長になるだけですので、いくつかだけ。
巻末の京極夏彦さんとの対談でも取り上げられていた「梶井基次郎の『檸檬』への違和感」、私も感じてました。教科書で読んだと思うのですが、「なんで本屋の棚差し荒らして檸檬置いてきたことが、こんなに「素晴らしいこと」みたいに取り上げられてるのさ」「確かに積み重なった画集の上に異色のレモンがぽつんと乗ってたら、意味ありげだけどさ~」文章としては美しいかもしれないけど、実際にやられたらたまったもんじゃないですよね(笑)。それを「バカッター」呼ばわりは、なかなか痛快でした。
あとは、樋口一葉の〈闇落ち寸前〉扱いも、「いわれてみりゃそうよねぇ~」とニヤリ。
森鴎外の家族の書き残した〈私の森鴎外〉が、それぞれ違った像を結ぶ点については、朝井まかてさんの『類』で知っていましたけど、「石見人森林太郎として死せんと欲す」の真意が解説されたと思いますね。かの大文豪・森鴎外も「好きに死ぬ」ことを遂げることこそが、最後の贅沢だったのだという。まさに大往生だったのかもしれません。

いくつもの〈死に様〉を読んで、じゃあ私の死に様をどうしたいか?と、ちょっと考えたんですが・・どうにも思い浮かびません。
生きることに必死で、読みたい本が山積みで、・・・う~ん、当分は死にたくない(笑)。
とはいえ、いつ死が訪れるかは、わかったもんじゃないわけで…悩ましいですなぁ。

(2025.03.22 読了)

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