『残照の頂 ~続・山女日記~』/湊かなえ △


湊かなえさん、本ッ当~に、ごめんなさい!!
湊さんは、全然悪くないです。もちろん本作『残照の頂』も。
単に水無月・Rに、〈登山にいい思い出がない〉だけなのです・・・。
この作品の評価の△は、前作『山女日記』でも書いたことですが、山岳部出身の父にガチ登山に連れまわされた記憶があまりにも過酷すぎて、「登山」というものに、全くいい思い出がないためなのです・・・(^^;)。

まあ、父にも悪気はなかったんだと思いますよ(笑)。
86歳の今もなお、月に1回は高尾山単独踏破(1日に2往復)というトレーニングをしているようなガチ山好きには、自分の子供が運動嫌いとか体力がないとか、山に登ったら必ずやらされるスケッチが大嫌い(芸術センス皆無)とか、理解できなかったんでしょうねぇ(笑)。

そんな登山嫌いな私でも、前作読んだ時は「登山で悩み解決って、ちょっと羨ましい」とか「あ~、私も山に登った方がいいのかな~」とか結構惑わされて、「湊かなえさん、オソロシイ!!」と思ったものです。
読んだのは2016年ですから、9年前。内容はぼんやりとしか覚えてなかったんですが、とにかく「山に登って悩み解決」という基本スタンスは覚えてたので、続編が出てすぐも〈読もう〉という気持ちがあまり切実ではなく、やっと今頃になって「まあ・・・読むか・・・」ということになりました。

前作に比べて、山の難易度が上がっています。
そして、コロナを挟んで登場人物たちの状況も、かなり切羽詰まったものになってきています。悩みも、深いです。
登山中に対峙する、自分の現況。自らの登山技術を駆使することで、その現況への冷静な振り返りが打開策を示唆してくれたり、素直に受け止める心持になれたりする。
亡くなった夫の思いを振り返る、学生時代の山岳仲間と再会する、失踪した友人を思う二人の音大生の葛藤、山岳ガイドになりたい娘と反対する母の本音、30年の時を経て離れていた期間を実際の登山報告と織り交ぜて交し合う書簡・・・。
それぞれに、深い思いと後悔と切り拓かれる未来が描かれていき、そして〈かつて自分が体験してきたことを肯定しながら、そのうえでの明るいこの先〉が見えてくる。そこがとてもよかったです。

ただ、残念ながらやっぱり「お山に登って、お悩みスッキリ解決~」というお約束的な流れには、私自身が納得できず(笑)。
「この人たちには、必要な過程であった」ことは理解できるんですけどね、私には響かなかったです・・・ホントすみません。
山に登る技術、見えてくる景色、自然から感じる空気感、出会う人々からの気付き、様々な要素が複合的に反応して、彼女たちの中で「登山と人生の物語」がハッピーエンドになるのでしょう。
それが出来る人と、出来ない人がいるということですねぇ・・・。致し方ありませんね(^^;)。

そんな中で、「いいな」と思えたエピソード。
山頂で音大生によるバイオリン演奏&歌唱、これは鑑賞してみたい!!ですね(山に登らないくせに何を言う・・・)。
それぞれの思い入れがあるオリジナル曲、これを聞けた人は本当に幸運ですよ。羨ましい。
それと、コーヒーと和菓子は合う、ということ。実はこれ、私もそう思うんですよね。
もちろん、なんでも合うということではなく、私としては干菓子系は緑茶ですが、生菓子や大福なんかはコーヒーとの組み合わせが結構よいと思ってます。
なので、果物大福とコーヒーの組み合わせと聞いて、ですよね~!って思ったのでした。
干し柿の入った大福とか、美味しそうですねぇ。食べてみたい。

もうすぐ54歳になる私はたぶん、これからも山には登らないと思います。
ですが、「山に登る」ことの物語は、タイミングが合えば読んでみたいと思ったのでした。

(2025.05.05 読了)

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