アシモフが「バイセンテニアル・マン」という短編で描き、その後シルバーヴァーグとの共著で長編化したこの作品、映画化もされてるそうですね。
調べたところ、短編は1976年、長編化が1993年、そして映画化が1999年。
そして、2025年の現在私が読み、このレビューを書くこととなりました。約半世紀前のSF作品が、今もなお読むに値する作品であるということに、驚きと喜びを禁じえませんね。
マーティン家にやってきた、家政ロボット・NDR114。
その家の小さな娘・アマンダ(リトル・ミス)がアンドリューと名付け、マーティン家の家政及び二人の娘の養育に携わっていく。
ふとしたきっかけで木工制作に比類なき才能を発揮したアンドリューは、製造元の調査を受け、それがほかの家政ロボットには現れ得ない能力であることを証言される。
特別なロボットとして、製造元の干渉を受けないようにマーティン家に庇護されながら、「自我」を育てていくアンドリュー。
リトル・ミスや有能な法律事務所の手を借りて、何度も裁判を繰り返しながら、自分の権利を少しずつ得ていった彼は、200年ののちに〈人間〉としての権利を認めてほしいと提訴し、そのために最後の手段を取ることになる・・・
物語冒頭で外科医と面談をするアンドリューのやり取りに、そこはかとない不安を抱くのですが、すぐにアンドリューの「始まり」に時間は巻き戻ります。
リトル・ミス、サー(リトル・ミスの父・ジェラルド)、その他の家族とのふれあい、ロボット3原則の拘束力、物語世界における「反ロボット的偏見」、ロボット産業を一手に引き受けていた会社の対応、自らをアップグレードさせていくアンドリュー。
様々な要素が絡み合いながら、〈人間とは〉〈ロボットとは〉、そして何が2者を線引きするのか、その境界をどのようにして乗り越えていくのか、人間社会での理解をどのようにして得るのか、が・・・描かれていきます。
最終的にアンドリューが取った手段が、よかったのかどうか、実は私にはよくわかりません。
というより、物語中の過程で、アンドリューのように自我を持ち、外見的にも情緒的にも〈ひと〉と判別のつけがたいロボット(アンドロイド)が、アンドリュー1体のみで特殊例でしかない、という状態に「ショック」を受けてしまったのです。
ロボットに対して危機を感じ、その発展の可能性を〈人間〉が摘んでしまい、アンドリューのようなロボットが現れないように、ロボットの適用状況というのでしょうか?をコントロールしてしまった人類。
この世界の人類の頑なさにショックを受け、願わくば私たちの生きるこの世界ではこんな風にならず、もっと人間とロボットの共存が進んでいくといいなと思ってしまいました。
この物語が描かれた当初は、インターネットもなければAIもなく、現在の私たちが生きている世界でのロボット工学とは発展の仕方も違う展開となっていますから、人類の許容レベルも違うのだろうと期待しています。
アップグレードにより、どんどん人間化していくアンドリュー。
最後に、有機的に死を迎えることになり、彼の最後の訴訟は勝利を認められ、〈ひと〉として、最期を迎える。
彼を迎えに来たのは、リトル・ミスであった。
アンドリューがロボットから人間になるまでの、200年の長きにわたる物語。
切ないながらも、温かい気持ちになれるラストでした。
(2025.05.26 読了)
この記事へのコメント
todo23
アンドリューはロボット工学が予知できなかった「不確実性」から生まれた善良なロボットでした。しかし原因が判らない限り、その「不確実性」は次には凶悪無比のロボットを作り出すかもしれません。アンドリューの分析調査をサーが拒んだ以上、USロボットが不確実性を持つロボットの製造を止めるのは当然だと思います。
アシモフの描くロボットの歴史を追いかけると、ロボットが少しづつ世の中に拡大していくものの、フランケンシュタイン・コンプレックスで衰退し、一時は昆虫や鳥型の小型ロボットの時代をがあり、その後再拡大(このあたりは『ロボットの時代』や『聖者の行進』と言った短編集)。やがてロボットと人間が共存する社会(ダニールというロボット刑事が出てくる『鋼鉄都市』と続編『はだかの太陽』)になって行きます。さらに『ロボットと帝国』という作品で、アシモフのもう一つの未来史「銀河帝国興亡史」に繋がって行くのです。壮大ですよ~~。
水無月・R
とても、楽しめました~♪
「不確実性」により、人類に対して害を成すロボットが生まれるかもしれない、という点に関して、慮外でした・・・!
超絶文系人間なワタクシ、甘っちょろい情緒に流されがちですね(笑)。
それでも本書を読んで、〈ひと〉と〈ロボット(アンドロイド)〉の共存繁栄を祈らずにはいられません。
アシモフの壮大なシリーズ、興味はあるものの、取り組むのが大変そうですね(笑)。
実は来週、大阪万博に行って、様々なロボット・アンドロイドを見てくる予定です。
本書を読んで、ますます万博体験が楽しみになりました。