『線は、僕を描く』/砥上裕將 〇


映画化されたときに、それを見た古い友人が「映画見て原作読んでみたけど、すごくいいよ」と勧めてくれたのですが、なかなか〈読みたい本リスト〉が進まず、やっと手に取ることが出来ました。
水墨画の世界に期せずして足を踏み入れることになった青年・青山霜介の物語、『線は、僕を描く』、私にとって全く身近ではない「水墨画」というものを知る、とても良いきっかけになりました。
そして、本作が著砥上裕將さんのデビュー作だと知って、衝撃を受けました。

今となってはすごく失礼だとはわかってるんですが、私にとって「水墨画」って、「墨の濃淡で描いた、辛気臭くて古臭い絵」という印象だったんですよね。美術の教科書などで見かけても、ふ~ん・・・って感じで、とくに何も思わなかったのです。
でも、本作を読んで「修正が効かない」「墨の濃淡だけでなく、筆さばきの妙で描くもの」「余白で余韻を作る」など、様々な技法や心意気などを知って、きちんと鑑賞する機会を得たいと思いました。

水墨画の大家・篠田湖山に偶然に出会い、少しの間話をしただけで、湖山の内弟子になることになった霜介。反発する湖山の孫で同年代の千瑛、兄弟子たち、大学の友人たちとの交流を経て、成長していく。
霜介が湖山や他の水墨画家たちから教えを受けているシーンを読んで、「すごい観察力だし、とてつもない再現力で、どうやったって私にはその足元にも到達できない」と、ちょっと置いて行かれた感が、実はありました。 寝食を忘れて画題に取り組むその集中力も、ガサツな私には全くないもの。そういう意味では、共感というよりは、私とは違う存在の物語として、切り離して読むことになりましたが、それでも霜介の努力や苦悩には一喜一憂し、彼の成長を心から応援する気持ちになりました。

湖山の揮毫会のシーンの緊張感が、とにかく強烈でした。さすが、水墨画界の重鎮。噂を聞きつけて、続々と人が詰めかけてきて、会場設営や揮毫の準備に回りが奔走する様子も、鬼気迫るものがありました。

様々な水墨画の様子を表現する描写が、バリエーション豊かで奥深くて、「こんな風なのかな」とぼんやりとでも浮かぶのが素晴らしかったです。きっと、詳しければもっと「見えた」のだろうなと思うと、ちょっと残念な気持ちにもなりましたね。
そういう意味でも、水墨画をきちんと見に行きたくなりました。風景画よりは花卉画を見てみたいです。読んでいて、そちらの方が私には魅力的に映りました。

(20225.06.02 読了)

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この記事へのコメント

  • 水無月・R

    todo23さん、ありがとうございます(^^)。
    砥上さんが水墨画家ということも知らずに読んでいました。
    教えて頂いた動画、見ました。
    すごい・・・の一言。
    あのスピードで、完璧なバランスで描かれる菊に、鳥肌が立ちました。
    やはり、本物を見に行きたいと、更に思いました!!
    2025年06月06日 18:56