いくつかの簡単な指示に従わせ、睡眠時間を削らせて判断能力を奪い、最終的に自殺させる(新しい完璧な世界へ行けると示唆)「ブルーモルフォ」を管理運営する景と、それを見守る幼馴染で恋人の宮嶺。
その『恋に至る病』は、誰に発症したものだったのだろうか。
『本の背骨が最後に残る』で、陰惨な中に芯のある美しさを宿した登場人物たちの〈物語〉で私を魅了した斜線堂有紀さんの、ファンタジーではなくリアルな現代が舞台の物語、非常にインパクトがありました。
美しく賢い少女が他人を操る術に秀でていたら、そして「流されやすい人間はいずれ悪を成すから、淘汰するべき」という思想を持っていたら。そして唯一人、彼女の味方でありヒーローであり続けることを願う者がいたら。
小学生の時から、クラスメートを操ってバランスの取れた平穏な状況を作り出していた寄河景。小学生がこれを出来る、という時点でサイコパスだと思いましたね。
そんな景を怪我から救出したことでクラスの男子に恨まれ、酷いいじめの対象になってしまった宮嶺。
そんな宮嶺を救うために、クラスの女子を操って加害の中心人物を処分した景。
「指示に従って行動し自殺すれば、新しい完璧な世界へ行ける」という「自殺ゲーム」を管理運営し、それを宮嶺に「見守っていて」と依頼する景。そして、何があっても彼女の味方でありヒーローでい続けようと、すべてを許容してきた宮嶺が最期に景を害し、自らがすべての罪を負って警察に捕まる。
首尾一貫しすぎている供述とちょっとした矛盾を突いて、宮嶺の取り調べを担当している刑事・入見は「君は景が用意した身代わりだ」と推測する。それに心を揺さぶられながらも、「ブルーモルフォのマスターは自分だ」主張し続ける宮嶺の心の拠り所は、景が大事にとっておいた、消しゴムであった・・・。
作者あとがきで「誰一人として愛さなかった化物か、ただ一人だけは愛した化物か」とあり、どちらともとれるけれど〈ただ一人だけを愛した〉ほうだったらいいな、と思いました。
あの消しゴムすらも、景の用意した伏線だとしたら、宮嶺は救われることのない無明の闇に囚われてしまうでしょうから。
でも、たぶん・・・景は全てを、宮嶺をもコントロールしていたのではないか、とも思うのです。
宮嶺は、宮嶺の信じたい〈物語〉を、信じているだけなのかもしれません。
(2025.07.14 読了)
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