『箱庭の巡礼者たち』/恒川光太郎 〇


別の世界が広がっている、箱庭。
それが見える人と、見えない人がいる。
そして、その箱庭の世界の先には、また別の世界がいくつも繋がっていて、様々な人々が暮らしていて、いくつもの物語が描かれていく。
恒川光太郎さんの描く多層世界を、『箱庭の巡礼者たち』と共に幾世代にも渡って一緒に旅をしていたかのような、そんな感覚になる物語でした。

生きている箱庭を拾った少年、現実の世界に見切りをつけてその箱庭に降り立った少女、箱庭の元の所有者。
少女は箱庭世界で革命を起こし英雄となり、その孫は人血を吸わない吸血鬼と次元を渡る旅をする。
時を渡る銀時計を手に入れた姉弟は何度も危機を回避し、姉はのちに高名な児童文学家に。弟の孫は、発明家となる。
吸血鬼だった前世の記憶を持つ少女は、児童文学家に手紙を送る。
大きな戦の直前で、時を止めた人々。
発明家の創り出したAIは、世界のどこにもない物語を語り始める。
自我を持つ有機ロボット・ナチュラロイドが、人間の国の運営を担っている世界。
鉱石化することで、朽ちない体を手に入れた一部の人間が長い長い歴史を知り、世界の終わりと始まりを何度も経験し、自らの生き抜く術を選ぶ物語。

いくつもの物語が、少しずつ関連していたり、入れ子構造になっていたり、時代が前後していたり、8000年の盛衰を繰り返す世界を渡る人々がいたり。
壮大で、きめ細やかで、合理的かと思えば、とても情緒的でもあり。
とても進化したAIがあっても、人間を超越することはなく(一部のAIは人間を害することがあったりもするが)、どんなに時を経ても〈優しく美しい〉だけの世界にはならない。

この作品を読んでこの感想を持つことが、正しいのかわからないのですが、〈人間は常に猥雑な生き物で、その猥雑さ故に個々が違い、その違い故に発展と衰退を繰り返す〉〈そしてそんな人間を内包しているからこそ、世界は何度でも終わり、何度でも始まる〉のではないかと思いました。

物語の始まりは、箱庭を拾った少年がいた〈現代〉ですが、そこから箱庭に降り立った少女の孫、そして更にその孫の孫が世界の終わりと始まり(期間としては約8000年)を何度も繰り返す鉱石化人類となり・・・とすると、この物語を集約して描いているのは、いったいどれぐらいののちの世界なのでしょう。

どの時代のどの物語の世界に存在してみたいか、ちょっと考えたのですが、どれも一長一短で、難しかったです・・というか、選べませんでした。
・・・やっぱり私は〈傍観者体質〉なんですよねぇ(笑)。
壮大で複雑な物語を直接体験するより、物語として読んで「ほえぇぇ~、こんな世界観を描けるなんてすごいな~」とか「ちょっとだけなら入り込んでもいいけど、たぶん深入りするとソッコー生命活動シャットダウンされるな(笑)」と、傍から見てる方がいいんです。
・・・って、ちゃんと文章化したら、すごくダメ人間な気がしてきた(笑)。

いつもの恒川作品だと、郷愁を覚える物寂しい世界や振り返ってはいけない昏い闇が蟠る異世界の入り口などを感じるのですが、本作にはそれはなかったですね。
どっちかというと、〈『スタープレイヤー』 シリーズ〉のような、ファンタジー的明るさがある物語ですね。

ところで。
最後の方で、スターレディという名の鉱石化人類がちょっとだけ出てきました。
もしかして、これって「スタープレイヤー」なのではないのでしょうか?なんて思ったりして。
だとしたら、この世界はとある「スタープレイヤー」の願いで構築された世界ってことに・・・??なんてね。
私の、思いつきですが、だったらすごいな~、なんてね。

(2025.08.14 読了)

ブロガーさんにご許可頂いたレビューをご紹介します♪
☆おすすめです!☆

この記事へのコメント

  • 水無月・R

    todo23さん、ありがとうございます(^^)。
    恒川さんの描く、どこまでも広がり続ける異世界を楽しみました~♪
    ただ優しいだけの世界ではなく、大変なことを乗り越えて〈人間〉というものがあり続ける世界であることが、とても良いと感じました。
    2025年08月15日 17:22