なんか・・・すごく羨ましい。
《一生最強》ってすごいパワーワードだし、しかも《私たち》ですもんね。
価値観というか、ノリやツボが同じだけど、同じ過ぎておかしなことにもならない、絶妙なバランスがあるからこそ成り立つ、女4人のルームシェア。しかも、20代後半から20年の長きにわたり、生活が続いているのだから、これは本物なのですよ(もちろん、物語ではあるのだけど)。
あの年代の未婚女子に押し付けられる価値観を躱したり戦ったりしながら、4人でタッグを組んで『たぶん私たち一生最強』を歌い上げる物語、とてもよかったです!
著者小林早代子さんは、「女による女のためのR-18文学賞」でデビューした作家さん。あの文学賞出身の作家さん、けっこう私の好みに合う気がしますね。
とにかく、夢も現実も困難もなぎ倒す勢いで踊り続ける4人の日々、楽しませていただきましたよ!
女4人のルームシェアって聞くとすっごく楽しそうだけど、「期間限定」とか「揉め事起きて空中分解」とか、マイナス要素もちらほら想像しちゃったりして、夢だけじゃ生きていけないから、現実は厳しそうだな~なんて思ったりもするわけですよ。
とりあえあず、冒頭で「朝」という名前の赤ちゃんが生まれて「母親は4人」となってたし、すごく希望に満ちた雰囲気だったので、ハッピーエンドになることは想像できてたんですが。
朝が生まれたことがハッピーエンドじゃなく、それも通過点の一つであり、さらにもっと発展した4人の様子が描かれた最終章なんて、なんかもう胸がいっぱいになりましたね。
ラストの章の語り手が、4人じゃなくて、もう一人生まれた娘・恵麻で、直接4人のことをがっつり書いてるんじゃなくて、女子高生・恵麻の日常に「踊り狂う母親たち」がちょっとだけ挟まれてるってのが、よかったです。
あ、ちなみにホントに彼女たちは踊ってます(笑)。娘の文化祭の観覧席で、自宅のパーティーで、「踊る」ことが出来る彼女たちって、素敵だなぁと思いますね。人生、楽しんでるなぁ(笑)。
「気の合う女友達同士で暮らせたら、男と暮らすよりもずっといいかも」というのは、思わず「マジそれな!」と共感してしまいます。
なかなか、実現は難しいですけどね。
理想的ではあるけど、《一生最強》を続けられる友達って、なかなかいませんし。
漫画家の花乃子・バリキャリの百合子・伝統的な日本企業OLの澪・転職を考えている亜希は、花乃子の10年来の恋人との破局をきっかけに、ルームシェアを始める。
高校時代の同級生で、そのころから馬の合った彼女たちは、周りの疑問視もコロナ禍のステイホームもちょっとした意見の食い違いも乗り越え、共同生活を営んでいく。
色々な出来事があり、それでも楽しく生きてきた彼女たちの中に突然持ち込まれた「亜希の妊娠および、共同育児参加へのプレゼン」。
相談なしに「子供が出来たから一緒に育てましょう」とは、亜希はずるいなって思うけど、そんなフツーの感想が吹っ飛ぶくらいのスピードで、了承が出ちゃうあたりが、なんとも彼女たちらしい。
お互いがお互いをわかってるからこその、通じ合いというやつなんですかねぇ。素晴らしい。カッコいい。もちろん、現実だったら、こんなに簡単にはいかないと思いますけどね。でも、こういうストーリーでは、アリだと思います。
20年以上続き、更に「70代になったら、なにをしようか」とか「最初に死にたくないけど、最後に死にたくもないから、そこは公平に4人一緒に生前葬」とか、ホントに《一生最強》なのよ。いいなぁ・・・ホントに羨ましい。
4人ずっと仲良く(多少の色々はありつつも)一生最強でいられる、すごく素敵な物語でした。
(2025.09.05 読了)
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