なんせ、テーマが〈終活〉でしょう?50代半ばの私にとっては、婚活よりずっと身近な「活動」なわけですよ。
4つの終活が描かれ、どれもなかなかに毒々しいです。
「SDGsな終活」
余命宣告された女性と結婚し、彼女の死を待つ男。
「最後の終活」
久しぶりに帰ってきた息子と、家の整理をしていると。
「小説家の終活」
わだかまりのあった女流小説家の形見分けで受け取ったワープロから出てきたものは。
「お笑いの死神」
癌を患うお笑い芸人の舞台の客席に、笑わない黒づくめの男が現れる。
「SDGsな終活」は、男の目論見がうまくいくわけないだろうな、と思ってたら、とんでもない方向から毒がふりまかれ、しかも跡形もなく消される結果になるとは、本当にびっくりしました。
悪いことってできないのねぇ・・・っていうか、なかなかに「妻」の方も大胆だなと。そして、お金があるってすごいことなんだなとも思いました(笑)。ざまぁ感が半端なく、ある意味、爽快かも?
このレビューの冒頭で「毒される」と書きましたが、実は「SDGs~」以外は、イヤミス感は少なめなんですよ。
だけど、〈毒〉なのは事実です。
「最後の終活」では、まだら認知症の老人に取り入る詐欺師の存在というどんでん返しの後に、心温まるラストが来て、ホッとしました。
でも、なんだか「自分が認知症になったら、どうしよう…」っていう不安は煽られちゃったかな。なるようにしか、ならないんですけどね・・・。
「小説家の終活」は、このまま行ったら最後にバレて社会的に抹殺されてしまうよ・・・と、胸が痛くなりながら読み進めていたので、途中で主人公が思い直してくれて、安心しました。本当にとてつもない覚悟が必要なことだったから、その勇気と、訂正に力を貸してくれた編集者の誠実さ、更には亡くなった作家とその遺族の思いも相まって、ラストの本屋の平台に並ぶ2作品を想像して、少し涙ぐんでしまいました。
きっと主人公は、この再スタートからまたコツコツと業績を積み上げて、人気作家になる。そう思えるラストで、とてもよかったです。
「お笑いの死神」の、ステージごとにだんだん近づいてくる黒づくめの男のイメージは恐怖でしたが、その真相がわかる奥さんのお葬式での挨拶。
笑って見送れる、素敵なお葬式でしたね。
きっと主人公・六ちゃんも、死神の真実を知って喜んだだろうなと思いますし、残された妻子に頼れる義父が出来たことに安心したんじゃないかな。よいラストでした。
〈終活〉という、真面目にとらえようとすればするほど深刻なテーマを、色々な方向から毒を込めながらも描き切った4編、実は1日(というか3時間)で読了しちゃいました。
良き〈終活〉かどうかは、それぞれ次第。
はてさて、私自身の終活は・・・。少しは手を付けたりもしてるんですが、まだまだですねぇ。〈読みたい本リスト〉なんて、長くなるばっかりだし(笑)。
(2025.09.25 読了)
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