女子駅伝に並走する謎の侍集団、お盆の早朝草野球大会に現れる謎の野球好き青年たち、夢中でスポーツをする若者のそばに現れる彼らの正体とは?!
万城目学さんの描く『八月の御所グラウンド』は、何故その場所なのか、何故彼らなのかは、まだ描かれていません。
・・・気になる~!!
あ、そうそう。すっかり忘れてましたが、直木賞受賞作だったんですね、この作品。
万城目さん特有のぶっ飛び感はやや少なめですが、語り手の内心語りが軽快で、読んでてとっても楽しかったです。
まずは「十二月の都大路上下ル」。高校女子駅伝大会で、応援要員のつもりだった1年のサカトゥーは、上級生の不調により急遽選手として参加することになる。彼女の不安は2つ。自分よりタイムのいい親友ではなく、タイムの伸びがいい自分が選ばれてしまったこと。次に、とてつもない方向音痴であること。
競技中に自分たちに並走する侍集団に気付き、それに引き寄せられるかのように違う方向に曲がろうとして、「右だよ!右!」と叫んでくれたのは、デットヒートで争っていたライバル校の選手だった。
翌日、そのライバルから「ほかの人には見えてなかったし、動画にも残ってないけど、(コスプレではなく本物の)侍集団がいた」ことを聞かされる。
サカトゥーと咲桜莉の友情もとても清々しい(出場を選ばれた理由も納得してお互いを認め合ってる)。
しかし、サカトゥーの方向音痴は、とんでもないですな(笑)。ここまですごいと、何か実は深い理由があるんじゃないかと思ってしまうくらい。
表題作「八月の御所グラウンド」。
彼女に振られたため、灼熱の京都盆地に居残ることになった朽木は、友人の多聞から「自分の卒論のために、研究室の教授の草野球チーム(チーム・三福)に参加してくれ」と頼まれ、早朝とはいえ炎天下の御所グラウンドへ行くことになる。
2回戦目でチーム人数が足りなくなり不戦敗の危機に瀕したが、朽木の研究室仲間の女子留学生・シャオさんと、シャオさんが誘った近くにいた青年・えーちゃんの登場により、無事に試合は催行される。次の試合ではさらに2人の不足が発生するも、えーちゃんの後輩、山下君と遠藤君の参加により、今度も試合は催行され、無事にチーム・三福は勝ち進んでいく。
現れた3人は、本当に野球が好きだったんだなぁ。最初は「たまひで」さんのお兄さんが、仲間に誘ったのかな・・・なんて思ったら、ちょっと涙ぐみそうになりました。
シャオさんが気付く国民的野球選手の彼の正体判明過程もなかなかにアツかったのですが、山下君の正体がわかってきた最後の多聞と朽木の会話には、「あぁ、きっと生前から彼らは知り合いで、野球が好きって話で盛り上がってて、あちらの世界で「山下君の妹の名前を冠した草野球大会があるから、参加しようぜ」ってなったんだったらいいなぁ!」って胸が熱くなりました。
物語は決勝戦前日で終わっていますが、お盆を過ぎても彼らは御所グラウンドに早朝から現れ、チーム・三福に勝利をもたらしてくれるんじゃないかなって、ほっこりした気持ちで読了しました。
彼らの出現の謎の理由は、「京都だから」なのかしら・・・。何かしら有りそうな土地柄では、ありますが。
続編『六月のぶりぶりぎっちょう』で、その辺は解明されるのかしら。さっそく、図書館予約を入れました。
(2025.10.01 読了)
ブロガーさんにご許可頂いたレビューをご紹介します♪
☆おすすめです!☆
この記事へのコメント
todo23
内容はかなり忘れたけど、面白い感想を書いていました。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/32362285.html
水無月・R
レビュー、読ませていただきました。
さわやかなスポーツ小説の中に郷愁が漂う感じが、ホントに良かったですよね。
語り手たちの一人ノリツッコミとかも面白く、とてもテンポよく読めました。
苗坊
万城目さんの作品にしては奇想天外さは少し抑え気味の(笑)作品でしたね。でもどちらもとても好きです。
どちらもスポーツがテーマでしたが息遣いが伝わってくるようで、描写がとても上手いなと思いました。特に駅伝は走っている情景が目に浮かぶようでした。
「八月の御所グラウンド」はまさかそんな人が登場するとは思わず、驚き、もしも戦争が無かったら大好きな野球を力の限り出来たはずなのに…と切なくもなりました。
水無月・R
どちらの物語も、軽やかにスポーツをする若者たちの爽やかさに、羨ましさすら覚えました。
とはいえ、サカトゥーの方向音痴っぷりには驚かされましたけど(笑)。
何故その場所に現れるのか、どうしてこのシチュエーションなのか、全く解明されてませんが、いつか全部が繋がる物語も語られるのでしょうか。楽しみです。