『六月のぶりぶりぎっちょう』/万城目学 ◎


前作『八月の御所グラウンド』にを読んだときに、「何故〈その場所〉なのか、何故〈彼ら〉なのか」は、次作でわかるのか・・・?」という疑問があったのですが、本作『六月のぶりぶりぎっちょう』では、まだそれは明かされていません。
十二月、八月、三月、六月と来たので、十二か月全部のエピソードがあり、その中でだんだん謎が明かされていき、更には全体をまとめ上げた最終章があったらいいなと期待してますよ!万城目学さん!!

「三月の局騒ぎ」、面白かった~。
この章は、かつて(二十年前)「にょご(女御)」だった主人公・若菜の回想。
と言っても平安時代の話ではなく現代の話で、とある京都の女子寮マンションでは、寮生のことを何故か「にょご」と呼んでいたのである。
そこで若菜が短期間だけ同室者として一緒に過ごした、十四回生以上であるらしきにょご・〈キヨ〉の思い出を語っているのだけど・・・。
キヨは、「私ほど、その篇首を知られているものは他に存在しない」と言い、鴨川デルタの突端で「春はあけぼのッ」と叫び、「猫の耳の中」というサイトにエッセイを書いていた。それらを総合すると、彼女は「清少納言」だったのでは?と、のちにエッセイストとなった若菜は想像している。
かつて誰とも知れない読み手から酷評された若菜が書いた文章を、キヨは「悪い出来じゃなかった」と言い、姿を消す。
若菜は、キヨからの言葉を胸に、文章を書く人になったんだろうな。素敵な話だと思います。
若菜の語る、女子寮生活の色々も、面白かったですね。寮生を「にょご」、東西に分かれた建物を「壺」と呼び、個々の部屋を「局」と呼ぶ。二人部屋の仕切りは「御簾」という名のすだれ。この女子寮のコンセプト、どういう経過でこうなったんでしょうねぇ(笑)。

「六月のぶりぶりぎっちょう」はまず、「ぶりぶりぎっちょうって何ぞ?」って?マークが頭の中を飛び交いますよね?
読み進めるうちに、大阪女学館の社会科の先生・滝川が研究発表の題材として選んだ、謎の多い遊具の名前だということがわかります。
「大阪女学館」「大和会」と聞いて、あっ!と気づきました。これ、『鹿男あをによし』の「京都・奈良・大阪」の女学館姉妹校ですよね?
うわぁ!繋がってる!繋がってる~!!こういうの、大好きです。
滝川先生が、同僚のソフィー先生・トーキチロー先生と共に巻き込まれた(でも自己意識が残ってるのは滝川先生だけ)、とんでもない事態。
特殊なシチュエーションなので、分かるように書こうと思うとクドクドと長くなってしまうのでやめておきますが、とにかくとんでもない状況。
ひと言で言ってしまえば、「現代に置き換えられた本能寺の変」。
何故信長は殺されたのか、殺したのは光秀だとして黒幕がいたのではないか、それは誰なのか・・・を、追及したい信長によって、六月二日に再現劇が繰り返される。
常にその再現劇に参加している蘭丸の思いが、切ないですなぁ。
そして、今回何故滝川先生たちが巻き込まれたかというと、本能寺の変に参加した唯一の黒人男性・ヤスケが、ソフィー先生に会いたがったから。そこには400年以上の時を経て繋がる関係があったんですね。それもまた、素敵な話だと思いました。

ぶりぶりぎっちょうは、信長が子供のころ遊びに使ったことがあったという話でしたが、その中にとあるもの(国宝ものですやん!)をお礼として仕込んだという信長(笑)。え、滝川先生、これどうする??(笑)

どちらの物語も、面白かったです。時に緊迫感がありつつもクスクス笑える展開、キャラクターやシチュエーションの見事な個性、とても読みごたえがありました。
本記事の冒頭にも書きましたが、12か月分の物語&解決編を読みたいので、万城目さん、よろしくお願いします!

(2025.10.27 読了)

この記事へのコメント