面白過ぎて、一気読みしちゃいました!
これが石田夏穂さんのデビュー作で、かつ芥川賞候補作だというのだから、恐れ入りますねぇ。
以前読んだ『ケチる貴方』では、〈ままならぬ身体との真剣なやり取りがズレていく〉ことが面白かったのですが、本作『我が友、スミス』では、その身体を完全にコントロールして変化させ、競い合うものへと昇華させていく様子が、とても印象的でした。
のちのち、「別種の生き物になりたい」から筋トレを始めたことに気付く主人公・U野。
そんな彼女は、地味で目立たない普通の会社員なのだけど、生真面目故にどんどんストイックさに拍車がかかっていく様子は、読んでいて清々しかったですね。同じ女性とは言え、根性の足りない私には絶対に辿れないルートですわ(笑)。
実は、コロナ禍でやめてしまったのですが、事情あって1年弱ほど24時間ジムに週2ぐらいで通っていたことがあります。
「家で読書してるのが一番楽しい」超絶インドア派の私なので、もちろん筋肉が身に付くことはないまま終わってしまったのですが(笑)。
その時にちょっと覚えた器具の名前や使用方法なんかが出てきて、「なるほどなるほど・・・」と思いはしましたが、ジムに通いなおそうという気にはならなかったですね。筋トレは、脳内追体験で充分(笑)。
鍛え上げた筋肉を披露する、ボディビル大会。筋肉だけでなく、ポージングや衣装・アクセサリー・日焼けさせた身体・手入れの行き届いた皮膚・長い髪など、外見も鍛え上げなければならない。女性らしさすら、求められるのである。
大会に向けて、時に疑問を覚えたり抵抗を感じたりしながらも、ストイックに邁進していくU野。
大会出場に重きを置く所属ジムのバックアップを受けながら、淡々と少しだけ常軌を逸したノリで(でもたぶん、大会出場者たちにとっては普通のこと)減量や外見磨きを進めながら、メンタルも研ぎ澄ませていく姿には、感心しかなかったです。
ひたすら大会に向けて邁進しながらも、時々〈外野(会社や家族)〉との軽い軋轢が生じるU野の内心の呟きのキレ味に笑ったり、外野とトレーニーたちとのギャップに「私はどっち側なのか」と危ぶんだりしました。
しかし、身体の鍛え上げを競うはずの大会で、12cmヒールを履いて優雅な所作を披露って、なんかすごいですよねぇ。7cmヒールすらまともに履いて歩けない私からしたら、別世界。12cmなんて、爪先立ちのレベルを超えてる気がしますもん。
ほとんどスニーカーしか履いたことのなかったU野が、最初から12cmで通勤時に履き慣らしをし、気がつけばそれで走れるレベルになってるって、ホントにすごい。しかも、会社に着く前に普通の靴に履き替えるのは、「面倒なことをごちゃごちゃ突っ込まれたくないから」。
なんだか、ジェンダー問題というか、世の中にはびこるしょうもない「他人の価値を勝手に評価する」風潮だよなぁと思うと、ため息をついてしまいますね。
そして、挑んだ大会。予選を経て本選で彼女の取った行動には、驚きました。
でも、U野は、それまでの努力を捨てたんじゃない。大会の在り方に抗議の声を上げたわけでもないと思うんですよね。
彼女が、自分を〈更に別種の生き物〉にバージョンアップさせた瞬間だったんじゃないかなと。
だから、ラストで元のジムに戻って淡々とトレーニングを続けるU野の〈自分の理想の身体〉〈ステージは自分で演出するもの〉という心の呟きが、とても沁みました。
この後、U野が何らかの大会に出ることはあるのか。あるいはひたすら、ストイックに自分の身体を鍛え上げ続けるのか。
どちらも納得できるような、終わり方でした。
ちなみに、タイトルにある〈スミス〉が、筋トレマシンの名称だというのは割と知れ渡ってることですが、私の一年弱のジム通いの記憶の中から引っ張り出せなかったので、ネットで画像検索してみました。
あぁぁ~・・・、アレかぁ。多分、使ったことないです(笑)。最初の、ジムのスタッフさんの説明の時にちょっとやったぐらいで。
ガチなトレーニーさん達が、いつも使ってた気がする(笑)。
(2026.01.03 読了)
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