どこかの書評で紹介されていて、気になって〈読みたい本リスト〉入りしていた本作『橘外男海外伝奇集 人を呼ぶ湖』。
橘外男さんというお名前は、全く知らなかったです。
解説によると、本作は「変格ミステリ」という分類に値するようですが、私がイマイチ、変格ミステリが何かをわかっていない(笑)。
読んた印象としては、ゴシックホラーの系統なのかなと。
独立した8編の物語で構成されているのですが、いくつかは「若く美しい女性を辺境の地に同行すると、怪異に攫われたり、変死したりして非業の最期を遂げる」という展開が同じで、ちょっと飽きました。
しかも、その怪異が解明されるわけでなく、おどろおどろしい祟りのようなものは続きそうな感じがして、宙ぶらりんな状態で物語が終わってしまうのが、私としてはスッキリしないというか。
それと、海外の古いタイプのゴシック小説を翻訳したような文体が、どうにも迂遠で読みづらかったですね・・・。
あの文体は、内容と雰囲気としては合ってるとは思うんですが、単純アタマの私にはちょっと合わなかったです。
8編の中で印象的だったのは、「雪原に旅する男」と「人を呼ぶ湖」。
「雪原に旅する男」は、気の良い若者が生みの母を迎えに向かった道中の宿で、酒に飲まれ浮かれ騒いだ結果がなんとも悲惨な現実として立ちはだかり、絶望の底に叩き落されるという展開が。救いようのないラストに、逆に納得がいきました。青年にとっては、本当に可哀そうな結末でしたが。
「人を呼ぶ湖」は、その〈人を呼ぶ〉という怪異についてはハッキリはしなかったものの、湖の水を全部汲み上げるという荒唐無稽な展開が来たのでもはやファンタジーなのだと頭を切り替えて読めました。
昏く深い湖に生える巨大な水藻に絡まる、水の冷たさのおかげで腐敗しない若き人妻たちの遺体という風景は、悍ましくも美しい。水から上げようと触れれば、すぐに肉は崩れ白骨化してしまう儚さも幻想的。
まあ、科学的にはたぶん、いくら水が冷たいからといって400年も前の水死体が、綺麗に藻に絡まった状態で水中に保存されるというのは、考えられないんじゃないかなとは思いますが。そこはファンタジーと思い込めばアリかな。藻以外には、その湖には動植物は一切もなかったんですね、きっと(生物学的にそれはアリなのかわからない)。
(2026.02.27 読了)
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